「人の心臓のミイラ」が保存されているはずの2つの石棺に、”全く違うミイラ”が入っていたと判明!?

history_archeology 2020/07/30

Credit: livescience

こちらは、イスラエルにあるハイファ国立海洋博物館に50年もの間、保管され続けている2体の石棺です。

1つは冥界の神オシリスの形に、もう1つは天空の神ホルスの形に彫刻されており、中には「人の心臓のミイラが入っている」と言われていました。

ところが、新たに行われた調査の結果、それぞれ全く違うミイラが入っていたことが判明しています。

研究員によると、オシリス型の石棺には、穀物と泥を混ぜた「穀物ミイラ」が、ホルス型の石棺には、ハヤブサと思しき「鳥のミイラ」が保存されていたとのことです。

中身が「心臓」ではありえない理由とは?

同博物館は、ここ数年間、所蔵されているコレクションを精査し、それぞれ最善の保存方法を決める作業を続けていました。

その中で、出くわしたのが2体の小さな石棺です。

しかし、館内に石棺の中身を知っている人はおらず、残された記録にも「人の心臓が入っている」とあるだけでした。

同博物館のロン・ヒレル氏は「保存状態の良さとは裏腹に、石棺の記録は不鮮明で、2000年以上前のものという情報以外には何も分かっていません」と話します。

オシリス型の石棺を納めていた棺/Credit: National Maritime Museum in Haifa
Credit: National Maritime Museum in Haifa

また、心臓が入っているという記録は、間違いに思われました。

というのも、古代エジプトのミイラは、基本的に体内の臓器は取り除くものの、心臓だけは残していたからです。

古代エジプト人にとって、感情や思考、意思が宿る場所は脳ではなく、心臓でした。心臓は来世への鍵を握っており、「死者の審判」において心臓が調べられるとされていたのです。

心臓を計量する様子/Credit: ja.wikipedia

天秤の片方に心臓を、もう片方に「マアトの羽根」を乗せて、もし心臓の方が重ければ、アメミットという怪物に食べられます。軽ければ、来世への転生が約束されます。

そのため、心臓だけが取り除かれて、小さな石棺に入れられているとは考えにくいのです。

ミイラの正体は?

そこで同博物館は、イスラエル・ランバム病院の放射線学会長にして、ジョージ・ワシントン大学の准教授も務めるマーシャ・ジャビット博士に協力を依頼。6月29日に、ランバム病院にて石棺のコンピューター断層撮影を実施しました。

Credit: National Maritime Museum in Haifa

その結果、長さ45センチのオシリス型石棺には、穀物と泥のミイラが入っていたことが分かったのです。

ヒレル氏によると、「穀物ミイラはオシリス神を祀る祭りの中でよく作られたもので、穀物を泥や粘土と混ぜて固めており、これを水に浸すと穀物が新たに発芽します。これが生と死のサイクルを司るオシリスを表したのです」と説明します。

Credit: National Maritime Museum in Haifa

一方で、長さ25センチほどのホルス型石棺には、ハヤブサらしき鳥のミイラが納められていました。

長い年月が経過しているせいで乾燥が激しく、組織がビーフジャーキーのように硬くなっていたそうです。骨の中の骨髄も乾燥しきっており、一部の骨以外はほとんど残っていませんでした。

また、首の骨折も確認されましたが、これは極度の皮膚乾燥のせいで、死後に折れたものとのことです。各臓器の欠如も見られましたが、心臓は残っていました。

Credit: National Maritime Museum in Haifa

両ミイラについては現在も調査が続いていますが、同博物館は今後、2体のミイラをメインに据えた展示の開催を計画しているとのことです。

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reference: livescience / written by くらのすけ
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