世界で「最も明るい蛍光染料」が開発される!サイリウムが再利用可能になるかも

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これまで固体の蛍光物質はうすぼんやりしていたが強烈な光を発するようになった/Credit: Amar Flood
point
  • 世界で最も明るい蛍光染料が開発された
  • これまで明るい蛍光染料は液体に限られていたが固体も強く光らせることができるようになった
  • 紫外線を供給することで天井に塗られたペンキを電灯のように使うことも可能になる

世界で最も明るい蛍光染料が誕生しました。

この新しく開発された素材は蛍光分子を改良するのではなく、蛍光分子の距離を適正に保つことで輝きを発揮したそうです。

これまで開発された蛍光染料の多くは液体状態で効果を発揮する一方で、固体状態では輝きを失っていました。

そのため既存の固体状の蛍光染料は光が弱く、液体状蛍光物質を使ったサイリウムなどの輝きは遠く及ばなかったのです。

しかし今回開発された素材は、結晶状にすることで既存のどの蛍光染料より明るくなり、固体状態であっても既存の10倍の輝きを維持し、3Dプリントのインクとしても使用可能とのこと。

商品として実用化されれば、オーダーメイドで加工された固形物を、ガンガンに光らせることが可能になるほか、ペンキに混ぜることで圧倒的な明るさで輝く壁や文字を作ることが可能になるでしょう。

またこの物質により、音楽ライブの際に毎回サイリウムを折らなくても、ずっと光っている、購入待ったなしの商品が誕生するかもしれませんね。

150年間の常識を打ち破る

Credit: Amar Flood

先述の通り、サイリウムなど液体の蛍光染料は強く輝く一方で、固体の蛍光染料の多くはぼんやりとしか輝きませんでした。

これは液体と固体が持つ性質の違いが原因でした。

液体状態では分子間の距離が保てるために、蛍光分子たちは自由に光を発することができます。

しかし固体は分子間の距離がギッチリと詰まってしまうために、蛍光分子が密着して、光が干渉したり、エネルギーの損失が起きていたのです

そのため現在に至るまで、より光らせたければ蛍光染料を液体の状態を保つことが常識とされていました。

しかしインディアナ大学の研究者たちは、シアノスターと呼ばれる環状の大型分子の中に蛍光分子を格納することで、分子間の距離を保つ方法を開発しました。

シアノスターはプラスに帯電しており、固体に固められても、シアノスターどうしが反発し合って距離をとることが可能。その結果、分子格子と働いて、内部に格納した蛍光分子の発光を保護・維持することができるのです。

そのため、いままで固体状態では蛍光を発しなかったような色素を発光させることができるようになりました。

また蛍光分子をシアノスターに取り込むことで、ペンキや繊維などあらゆる固形素材に混ぜ込むことが可能となった他、3Dプリントのインクとしても使用可能となったとのこと。

今まで固体状態の蛍光染料といえば、ぼんやりと薄く輝くものが主でしたが、これからは多様な形の固形物が、ギラギラと光輝くようになるでしょう。

さしあたっては、サイリウムなどこれまで使い捨てとされてきた蛍光が、何度でも再使用可能な固形スティックに変更されると考えられます。

しかしそれだけではありません。

シアノスターと内部に組み込む分子を変えることで、赤外線のようなエネルギーの低い光を(収束・変調し)、太陽光発電に取り込むことができるようになる可能性もあるのです。

紫外線を供給することで永遠に光り続ける蛍光物質になる

左は通常の白い光をあてたもの。右は紫外線をあてたのも/Credit: Amar Flood

今回の研究成果は単に年間のサイリウム代が浮くだけではありません。

シアノスターの持つ可能性は極めて大きく、太陽光発電の効率をも改善する可能性があります。

さらに、固体状態で強烈に輝く特性は、芸術家にとっては次世代の絵の具となり、それまで表現不可能であった立体的な光る構造物をつくれるかもしれません。

また光源に紫外線を使うことにより、蛍光染料を光り続ける固有光源として使用することができるようになります(紫外線はヒトの目に見えないから)。

これまで光は電球やLEDが主に発していましたが、紫外線供給源との組み合わせで壁に描いた四角形や円形の模様を光源にすることができるようになるのです。

これは見た目には塗られたペンキが、極薄の電灯のように振る舞いはじめることを意味します。

電灯やネオンは都市の風景を一変させましたが、もしかしたらシアノスターを組み込んだ蛍光塗料も、私たちの町の夜景を大きく変えてしまうかもしれません。

 

研究内容はアメリカ、インディアナ大学のクリストファー・R・ベンソン氏らによってまとめられ、8月6日に学術雑誌「Cell Press」に掲載されました。

Plug-and-Play Optical Materials from Fluorescent Dyes and Macrocycles
https://www.cell.com/chem/fulltext/S2451-9294(20)30310-7

外部要因なしで発光し続けるファンタジーな発光植物が開発される

【編集注 2020.08.11 14:10】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。
reference: sciencealert / written by katsu
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