「フェイスシールド」は新型コロナウイルスの飛沫を防げない可能性あり。米国が”飛沫の可視化”により検証

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Credit:Siddhartha Verma,Physics of Fluids(2020)

reference: livescience

最近は新型コロナウイルス感染予防のために、店員さんがフェイスシールドを装着している光景をよく見かけます。

しかし実際、あのフェイスシールドはどのくらいウイルスの飛沫を防いでいるのでしょうか?

9月1日付けで科学雑誌『Physics of Fluids』に発表され飛沫拡散の可視化実験では、人の吐く飛沫が細かな粒子となって気体のようにただよい、最終的にかなりの広範囲にまで及ぶ可能性が示されています

唾が飛ぶから危ないという認識だと、咳などによって飛沫は真っ直ぐ飛ぶだけというイメージを持ってしまいがちです。現在の感染予防は、そうしたイメージに基づいて対策されているものも多いでしょう。

今回の実験のように、エアロゾル化した飛沫の広がりを視覚化して確認することは、今後私たちが感染予防を考える上でも重要な知見をもたらすのです。

フェイスシールドや呼吸弁付きマスクは危険?

Credit:Siddhartha Verma,Physics of Fluids(2020)

今回の研究で対象とされているのは、フェイスシールドや呼吸弁の付いたマスクの飛沫防止効果です。その他のマスクについてはこちらの記事も参考にしてください。

フェイスシールドは正面をカバーして、表情も相手に見えるという利点を持っていますが、見た通り下側は完全に開いています。

呼吸弁付きマスクは、主に建設作業などで粉塵を吸い込まないよう用いられるマスクですが、これは吸う場合は空気を濾過しますが、吐き出す息を濾過する効果は特にありません。

そのためこの2種のマスクについては、米国の疾病対策予防センター(略称: CDC)では布製マスクの代替品として推奨していません

しかし、フェイスシールドはもはや日常風景の一部のように利用されており、海外の学校では生徒たちに着用されて授業を実施している例もあります。

フェイスシールドが警戒の対象にしているのは、唾による比較的大きな液滴の飛散です。

しかし実際に人が咳をした場合、飛沫はエアロゾル化して空間に広がり、人が密集した環境ではこの飛沫が蓄積されて感染症につながる恐れがあります。

そこで、今回の研究チームは水とグリセリンで作った蒸気を霧吹きのように吐き出す機械を作り、このポンプをマネキンの口に設置することで、咳のシミュレーションを行いました

可視化された飛沫拡散

この実験では、緑色のレーザーを用いて蒸気の飛沫を可視化させて確認するという方法が用いられました

これはライブ会場で使われる視覚効果に近い方法です。

Credit:Florida Atlantic University

フェイスシールドをした場合の咳シミュレーションでは、最初飛沫はシールドにぶつかり地面の方へと流されていきます。これで拡散は防止されたかのように見えます。

しかし小さな飛沫は空間に浮かんだまま留まり、横方向へと広がっていったのです。

最終的に飛沫は正面方向へ0.9メートルも広がっていきました。また場合によっては飛沫は正面だけでなくマネキンの後方へも回り込んで広がっていくパターンも見られました。

呼吸弁の付いたマスクでも、地面の方へと飛沫は排出されていますが、やはり小さな飛沫は空中に留まり周囲へ広く拡散していく様子が確認されたそうです。

Credit:Florida Atlantic University

また研究者は外科用に使用される異なるブランドの布製マスクでも同様のテストをしました。

あるブランドのマスクは前方への飛沫拡散を止める効果があったのに対して、大量の飛沫がマスクから漏れてしまうブランドもあったとのこと。

このことから研究者は、フェイスシールドや呼吸弁付きマスクが飛沫の拡散予防に有効でないこと、また通常の布製マスクでもメーカーによる製造や材料の違いにより、大きく効果が異なる可能性を指摘しています

あくまでエアロゾル化した飛沫拡散のシミュレーション

こうした情報はかなり不安を煽るものですが、注意しなければならないのは、今回の研究はあくまでエアロゾル化した飛沫のシミュレーションに過ぎないという点です。

この研究からは、こうした飛沫の拡散が感染拡大にどの程度寄与するかという正確な条件付けのデータは考慮されていません。

ウイルスが空気中でどれくらいの時間感染力を維持するのか? 感染粒子自体はどのくらいの距離を移動できるのか? 感染する恐れのあるウィルス量はどの程度なのか? こうした問題の正確な値は不明です。

研究チームが今回の実験で示したかったのは、優れたマスクでも飛沫には漏れが発生するということ、そしてマスクを付けていたとしても物理的な距離を維持することは重要だ、ということです。

Credit:depositphotos

フェイスシールドはそもそも会話で飛ぶ唾を防ぐことが目的で、咳などによる飛沫の防止まで想定して使っていない人も多いでしょう。

しかし、顔を見えるようにすることが目的のフェイスシールドでは布製マスクを併用する人は少ないため、咳で飛沫が拡散するリスクや、拡散した飛沫を吸い込むリスクが高いということは認識しておくべきでしょう。

すでに新型コロナウイルスは収束に向かっている雰囲気もありますが、また感染が広がる可能性も否定できません。

正しい知識を身につけ、できる限り感染のリスクを減らすよう努めるに越したことはないでしょう。

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