ペルーのハチドリは毎晩「ミニ冬眠をして体温を3℃まで下げる」と判明!驚愕の省エネルギー術

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アンデス山脈の高地に住むハチドリが研究対象に選ばれた/Credit:depositphotos

reference: sciencenews

鳥類は一般的に恒温動物であるという知識には、例外があったようです。

9月9日付けに『The Royal Society』にて発表された研究では、鳥類であるハチドリが夜間に体温を急低下させることが示されました。

ペルーのアンデス山脈は、花の蜜をたっぷり含んだ花々が咲き誇り、天敵となるタカなどもいないため、ハチドリの楽園になっています。

しかし1つだけ「寒さ」の問題がありました。

富士山の頂より高い、標高3800mに存在する楽園は、夜になると氷点下付近まで気温が下がり、迷い込んだ動物を凍死させる「寒の地獄」と化します。

この寒さを恒温動物が切り抜けるには、体に蓄えた脂肪を燃焼させ、体温を維持しなければなりません。

しかし全体重が僅か6gしかないハチドリは、自身を一晩温め続けるだけの脂肪を持っていなかったのです。

いったい彼らはどうやって夜を生き延びているのでしょうか?

脂肪のないハチドリは恒温のままでは夜の寒さを生き残れない

ハチドリはホバリングするために体重が僅か数グラムしかない/Credit:depositphotos

ハチドリは羽を高速で動かしてホバリングする能力を得た代償として、心臓は1秒間に20回も拍動し、日中の体温は40℃にも達します。

そのため起きている間は常に高カロリーの花の蜜を吸い続ける必要があるのです。

夜の気温が氷点下まで下がる環境では、このエネルギーの消費の多さを保ったまま生き残るのは不可能。しかし脂肪の量を増やしてエネルギーをため込む道もとれません。

なぜなら日中、常にホバリングしなければならないハチドリにとって、重りとなる脂肪をつけたまま生きることができないからです。

そのためアンデス山脈のハチドリたちは、別の方向に進化しました。

夜になるたびにミニ冬眠をして、休眠状態になることで、エネルギーの消費を抑える戦術を採用したのです。

毎晩冬眠する能力が知られているのは一部の小型のげっ歯類などの限られた種だけとのこと。

これまでの研究により、アンデスのハチドリは夜になると体温を17℃まで下げると共に、心臓の鼓動数を1秒間に約0.67回まで落とすことができると報告されていました。

しかし、ニューメキシコ大学のウルフ氏は、17℃は高すぎると考え、より詳細な調査を行うことにしました。

夜の体温3.26℃

3.26℃の体温は鳥類では最低温度になる/Credit:depositphotos

調査をするにあたり、ウルフ氏は現地に生息する6種類のハチドリを捕らえました。

そして彼らの肛門(総排泄口)となる部分に小型の温度センサーを挿入し、1晩ゲージに入れたまま観察を行いました。

結果、全てのハチドリが夜になると冬眠状態になり、そのうちクロテリオハチドリ(学名: Metallura phoebe)と呼ばれる種類では、なんと体温が3.26℃まで低下していることが判明しました。

この3.26℃という温度は、全ての鳥類や冬眠しない哺乳類で記録されたものの中で、最も低い温度です。

またこの体温で夜を乗り切った場合、計算上、基礎代謝によるエネルギー消費を95%削減することが可能となります。

しかし、問題はまだありました。

ほぼ外気と変らない3℃まで内臓温度を低下させたあと、朝になったら再び40℃まで体温を戻さなければならなかったからです。

ハチドリの目覚めは、いったいどのように行われるのでしょうか?

朝になると1分間に1℃ずつ上がる

高度な温度調節能力が日の出と共に体温を戻していく/Credit:depositphotos

目覚めの過程もセンサーはとらえていました。

日の出の頃になると、ハチドリは筋肉を痙攣させはじめ、1分間に1℃という急速な再加熱が起こります。

この再加熱の過程はおそらくハチドリの意識がもどる前にはじまる、自動化されたプロセスと言えます。

ハチドリの体温は確かに毎晩冷やされ「変温」しますが、毎朝元に戻るという過程があるために、ヒトをはじめとした通常の脊椎動物よりも、圧倒的に高度な温度調節能力(恒温性)を備えているとも言えます。

中学生の教科書などでは、鳥類は恒温動物で爬虫類は変温動物という画一的な知識しか書かれていませんが、研究の最前線では一段掘り下げた恒温の概念がうまれつつあるようです。

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