ホオジロザメが”恐怖”で1年間も縄張りから逃げ出す「海のギャング」がいると判明

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Credit:Wikipedia

reference: sciencealert

ホオジロザメといえば数多く作成されているサメ映画の主役であり、人間が海でもっとも恐れる生き物の1種でしょう。

しかし、ホオジロザメは海で最強の生物というわけではなく苦手な相手がいます。それがシャチです。

2019年4月に科学雑誌『Scientific Reports』に掲載された論文では、大規模な調査の結果、ホオジロザメは自らの狩場でシャチを見かけると、ものの数分で逃げ出し、次のシーズンまで帰ってこなくなると報告されています。

サメよりシャチのほうが強い、という話はたびたび耳にしますが、傍若無人に思えるホオジロザメがそこまでシャチを恐れる理由はなんなのでしょうか?

GPSタグをつけた海洋生物の大規模な調査

この研究では、チームは2つの調査から収集したデータを分析しています。

1つは2006年から2013年にかけてGPSタグをつけたホオジロザメ165頭の行動記録。

そしてもう1つはサンフランシスコ沖にあるファラロン島で27年に渡って収集された、シャチサメ、アザラシの個体数データです。

Credit:Salvador J. Jorgensen et al.,Scientific Reports(2019)

またチームはファラロン国立海洋保護区で、ホオジロザメとシャチが遭遇した4回の記録もデータと照らし合わせて分析を行いました。

その結果明らかになったのは、この海域にシャチが現れるたびに、ホオジロザメは非常に素早く退散しいなくなってしまうということでした。

それはただシャチがこの海域を通り過ぎただけで、1時間も滞在していなかったとしても、ホオジロザメは数分以内に逃げ出してしまい、次のシーズンまで1年近く同じ海域に近づかなくなったのです。

この出来事で恩恵を受けるのが、ホオジロザメの捕食対象であるゾウアザラシです。

モントレー・ベイ水族館の海洋生物学者スコット・アンダーソン氏によると、ファラロン島では、季節ごとに平均して40頭のゾウアザラシがホオジロザメに捕食されています。しかし、シャチが現れたあとサメによる被害は1頭も発生しなくなるというのです。

シャチはアザラシを襲って食べることもありますが、それは旅をするシャチであり、そうした個体はあまり多くありません。通常のシャチは魚を主食にしているため、アザラシはしばらくの間、安全に暮らせるようになるのです。

「海のギャング」シャチの強さとは

シャチ/Credit:Wikipedia

シャチはマイルカ科の動物で、見た目もずんぐりした可愛らしい姿をしています。

一方のホオジロザメは恐ろしい見た目とイメージを持っています。

ホオジロザメ/Credit:Wikipedia

しかし、骨格を見比べた場合、サメは軟体魚類で化石にも残らない脆弱な骨しか持っていません。

一方の哺乳類であるシャチはがっしりとした強靭な骨格を持っています。ホオジロザメはシャチに体当りされただけで体がボロボロになり抵抗もできないと言われています。

シャチの骨格標本/Credit:Wikipedia

シャチがホオジロザメを襲っている目撃例も少ないながら存在しており、シャチに襲われたと考えられるサメの遺体も浜で発見されています。

この場合、ホオジロザメは肝臓を食い千切られた状態で見つかっています

Credit:Hennie Otto/Marine Dynamics/Dyer Island Conservation Trust

シャチがサメを襲う理由は、ホオジロザメの高カロリーな肝臓がシャチにとって補助的なエネルギー源になる可能性があるからだと推測されています。

ホオジロザメはシャチをどう思っているのか?

Credit:catmando1962,flickr

一方でシャチは偏食家で知られており、サメを積極的に捕食することはないとも言われています。

つまりシャチに襲われた経験を持つサメは少数のはずです。

ではなぜ、ホオジロザメはそんな一目散にシャチから逃げ出すのでしょう? そこには私たちが明確に発見できていないだけで、本能的にサメがシャチを避けるような恐ろしい経験が刻まれているのでしょうか?

実はまだ、この点については明確な調査結果がでてはいません

ただ、食物連鎖の頂点にある捕食者が、同じ海域で獲物を取り合えば互いに不利になることは明白です。そのためホオジロザメはお気に入りの狩場をシャチに譲り、自分たちは別の狩場へ移動しているという可能性が強いようです。

食物連鎖におけるトップの捕食者間の相互作用については、陸上の動物についてはかなり調査が進んでいますが、海洋ではその記録がほとんどなく、完全に理解することが困難になっています。

海のギャングたちの関係性を人間が理解するには、まだしばらく時間が必要になるだろうと、今回の研究の筆頭著者モントレーベイ水族館のサルバドール・ジョーゲンセン氏は語っています。

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