ショウガの免疫機能に対する生物学的メカニズムがついに解明!
ショウガの免疫機能に対する生物学的メカニズムがついに解明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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実は未解明だった「ショウガが免疫細胞に作用するメカニズム」を解明!

2023.09.28 Thursday

ショウガを科学します。

米国のミシガン大学(UM)で行われた研究により、ショウガの持つ抗炎症効果の根底にある、生物学的なメカニズムが解明されました。

ショウガは何千年もの間、薬として使われており、優れた抗炎症効果を持つことも知られていますが、人間の免疫細胞にどのような変化を起こすかは解明されていませんでした。

今回の研究ではそのメカニズムが解明され、ショウガサプリメントがリウマチなどの自己免疫疾患の改善に役立つ可能性がマウスと人間の両方で実証されました。

研究者たちはショウガに含まれる6‐ジンゲロールが慢性炎症性疾患を治療するだけでなく、アトピー性皮膚炎の改善も期待できると述べています。

研究内容の詳細は2023年9月22日に『JCI Insight』で公開されました。

Scientists Uncover Biological Mechanism Underpinning Ginger’s Effect on Immune Function https://www.technologynetworks.com/tn/news/scientists-uncover-biological-mechanism-underpinning-gingers-effect-on-immune-function-379165
Ginger intake suppresses neutrophil extracellular trap formation in autoimmune mice and healthy humans https://insight.jci.org/articles/view/172011

ショウガの効能は知っていてもメカニズムは謎だった

ショウガの効能は知っていてもメカニズムは謎だった
ショウガの効能は知っていてもメカニズムは謎だった / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

ショウガはさまざまな病気の家庭薬として長い間使用されてきました

その効能は消化不良の改善、吐き気の抑制、減量、血糖値の低下、心臓病リスクの低下、抗酸化作用、抗がん特性にも及んでいます。

しかし加えてショウガにはもう1つ、免疫の過剰反応を抑える抗炎症作用があることが知られています。

炎症に代表される免疫機能は体内に侵入した異物を排除する重要な役目があります。

しかし、ときに炎症は症状を長引かせることがあります。

ハーバード大学で行われた研究でも、炎症による防衛が成功した後には、マッサージなどで炎症物質を早期に患部から流し去ることが症状の早期回復につながることが示されています。

マッサージ効果の科学的解明に成功! 炎症物質を洗い流して回復速度を2倍にしていた

また人間の免疫機能はしばしば健康な細胞を異物と認識して攻撃し破壊してしまう深刻なエラーを起こしてしまうことが知られており、リュウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患を引き起こします。

そのため古くからショウガの持つ抗炎症効果は、そうした症状に対しても有効であると考えられていました。

しかしショウガの持つ抗炎症効果について理解が進んでおらず、どんな仕組みでショウガが免疫細胞に干渉しているかは不明でした。

そこで今回、ミシガン大学の研究者たちはマウスと人間の被験者の両方に対してショウガの丸ごと抽出物を経口摂取してもらい、免疫機能にどんな影響が出るかを調べることにしました。

調査にあたってはまず、自己免疫疾患の一種である高リン脂質症候群(APS)または狼瘡を発症するように遺伝子操作されたマウスが用意されました。

研究者たちはこのマウスたちに対し、ショウガの丸ごと抽出物を6週間にわたり毎日、強制的に経口摂取させました。

まずマウスにてショウガの持つ抗炎症作用と自己免疫疾患への効果が確かめられました。で味は?
まずマウスにてショウガの持つ抗炎症作用と自己免疫疾患への効果が確かめられました。で味は? / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

すると白血球の一種である好中球と呼ばれる細胞において、興味深い変化が現れました。

好中球には侵入してきた病原体に対してある種の自爆攻撃(NETosis)を行う役割を担っています。

この自爆攻撃は極めて強力であり、強い炎症反応を引き起こすとともに、病原体を死滅させます。

ただ好中球の自爆攻撃は強力であるが故に、過剰に起こると周りの健康な細胞まで損傷させる自己免疫疾患を引き起こすことがあります。

今回の研究によりショウガに含まれる6‐ジンゲロールには、この好中球の自爆攻撃を抑制する効果があることが判明しました。

また6‐ジンゲロールが好中球に与える影響を追跡したところ、細胞内部で情報伝達を担うcAMPと呼ばれる化学物質の濃度を上昇させていたことが判明しました。

好中球が自爆攻撃を行うには細胞内部である種の自爆シークエンスが承認される必要がありますが、ショウガの成分によって情報伝達物質の濃度に変化が起こり、結果的に自爆シークエンスが抑えられていたのです。

免疫機能が誤作動し、過剰な自爆が健康な細胞に対して行われるとしばしば症状が重症化し命にかかわります。
免疫機能が誤作動し、過剰な自爆が健康な細胞に対して行われるとしばしば症状が重症化し命にかかわります。 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

時限爆弾で例えるならば、自爆スイッチを形成する回路に不正電流が流れ込み、スイッチが作動しなくなった状態と言えるでしょう。

ただマウスで観察された現象が人間でもそのまま起こるとは限りません。

そこで次に研究者たちは、人間の被験者を使った臨床試験(小規模)を行うことにしました。

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