「時間の長短」を感じる脳の部位が特定される!ナゾだった”時が早く過ぎる日”の原因とは?

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時間感覚の中枢は理性や思考を司る前頭部ではなく側面にあった/Credit:Journal of Neuroscience

ある日は時が早く過ぎて、ある日は遅く感じる。

あるいは速いテンポで音楽を聴いた時に、周囲の景色が一瞬だけスローにみえる。

このような不思議な時間感覚の歪みは、誰もが経験する現象でありながら、長い間、発生原因は謎でした。

しかし9月14日に『Journal of Neuroscience』に掲載された論文によって、人間の時間感覚を司る脳部位が明らかにされました。

いったい脳のどんな部位が、時間感覚を司っていたのでしょうか?

時間感覚の中枢を探すヒント

時間感覚の中枢に損傷を負った人たちは時間の認識が狂ってしまう/Credit:depositphotos

主観的な時間感覚の源泉を辿るにあたってヒントとなったのは、の縁上回(えんじょうかい、英: supramarginal gyrus)と呼ばれる部位に損傷を負った人々のデータでした。

このの側面にある小さな部位に事故などで損傷が起きると、時間感覚が損なわれるという報告があったからです。

そこで大阪大学の研究者たちは、縁上回こそが時間感覚を生み出していると考え、調査することにしました。

MRIの中で行われた科学

Credit:depositphotos

縁上回と時間感覚の関係を調べるにあたっては、科学では馴染み深いMRIが用いられました。

MRIを使うことで、被験者の活動をリアルタイムで測定することができるからです。

方法も極めてシンプル。被験者たちはまずMRI内部に設置された画面で、灰色の円を見せられます。

ただし円の表示される時間は0.25秒間~0.75秒間までランダムです。

続いて、同じくMRI内部に設置されたスピーカーから0.5秒間、大音響のビープ音が発せられます。

MRI内部で行われる光景はシュールですが、実は大きな意味がありました。

は単に視覚と聴覚を刺激しただけでなく、同時にそれぞれの感覚に「時間感覚」が加わっていたかを確かめていたのです。

もし縁上回が時間感覚を処理する中枢ならば、視覚と聴覚のどちらの刺激に対しても活性化し、それぞれの感覚に対して時間感覚を「外付け」しているはずなのです。

結果を分析してみると、予想通り縁上回は視覚と聴覚、どちらの刺激に対しても活性化し、双方の記憶に対して時間感覚(時間軸)を「外付け」ているようにみえました。

しかし、これだけではまだ縁上回(SMG)を時間感覚の中枢とするには不十分です。

より検証を確実にするためには、実際に縁上回のはたらきが鈍った場合に、本当に時間感覚が歪むかどうかを確かめなければなりません。

時間感覚の中枢が鈍ると時間の歪みが大きくなる

時間感覚の歪みは前頭部が活発になると発生する/Credit:depositphotos

研究者は最初の(視覚と聴覚の刺激)が終わった後に、追加で被験者に対して再び灰色の円の画像をみせました。

この灰色の円はどの被験者に対しても、同じ0.5秒間だけ表示されます。

しかし被験者によって、答えはまちまちでした。

全体としては、最初ので短時間(0.25秒間)しか灰色の円を見ていない被験者はこの0.5秒間の円の出現時間をより長く過大評価し、長時間(0.75秒間)見せられた被験者は逆に短く過小評価する傾向がありました。

これは、テンポの速いを聴いていると、周りの景色がスローにみえ、テンポの遅いを聴いていると周りが早くみえるという現象が、視覚が先行する形で起きていたことを意味します。

ただ興味深いことに、縁上回の働きが活発であった人ほど、答えに誤差が少なく(より0.5秒に近い答えを出した)、不活発であった人ほど大きくはずれた答えを出しました。

この結果は縁上回の活性度と正確な時間感覚がリンクしていることを意味します。

時間感覚の操作が可能になれば主観的なタイムトラベルも可能になる

主観的なタイムトラベルは誰の未来も過去も変化させないクリーンなタイムトラベル?/Credit:deposotphotos

今回の研究により、人間の時間感覚が縁上回の活性によって変化することが示されました。

もし将来的に縁上回の活性を変化させられる薬が開発されれば、1年が一瞬に感じたり、逆に1日が1年に感じるようにできるかもしれません。

世界のような話ですが、縁上回の研究はコストのかからない主観的なタイムトラベルの第一歩となるのかもしれませんね。

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