宇宙にある「金」はどこからやってきたのか?元素の起源が覆った可能性あり

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輝く金
輝く金/Credit:Depositphotos

金やプラチナはなぜ効果な貴重品なのでしょう?

それは金が星の核融合では作られない重い元素だからです。このため宇宙のどこに行っても金は珍しい存在です。

では、そんな重い元素はどこで生まれているのでしょうか。

これまで、その主な起源は中性子星の衝突だと考えられてきました

しかし、9月15日付けで科学雑誌『The Astrophysical Journal』に掲載された研究は、中性子星衝突の発生頻度では、現在の宇宙が持つ金の推定量を作り出すことはできないと報告しています。

一体、金は宇宙のどこでうまれているのでしょうか?

宇宙にちらばる元素の起源

核融合のイメージ
Credit:ESO/L. Calçada/M. Kornmesser

ビッグバンから始まった宇宙には最初水素しか存在しませんでした。

やがて水素は、密度の差から重力を生み出し、集まって核融合で輝く恒星を作り出します。

恒星ではより重い元素のヘリウムやリチウム、さらに重い元素が生成されていきました。

しかし、星の核融合には限界があり、鉄より重い元素は生み出せません。核融合は通常エネルギーを発生させますが、鉄より重い元素の合成では、逆にエネルギーを消費してしまうためです。

では鉄より重い元素はどうやって生まれるのでしょう?

それはr過程と呼ばれる高速で中性子を捕獲する現象によって生成されます。中性子はベータ崩壊などによって陽子に変わるので、核融合以外の方法で重い元素が誕生していくのです。

ただr過程を起こすには、豊富な中性子が必要で、中性子を提供するためにはかなり高エネルギーの爆発が必要になります。しかもそれが瞬間的に起きる必要があるのです。

r過程は超新星でも発生しますが、もっとも有力な候補と考えられているのが、中性子星の衝突です。

これについては、さほど異論はないのですが、新たな研究が明らかにしたのは、その発生頻度です。

研究チームはこれまでの宇宙の観測データを分析し、中性子星の衝突が起きる頻度を計算しましたが、それは現在宇宙に存在する金などの重元素の推定量を生み出すのにまるで足りなかったのです。

元素起源の新たな計算

周期表
元素起源を時間経過による推定生成量であらわした表。/Credit:Chiaki Kobayashi et al.; Sahm Keily

イギリス・ハートフォードシャー大学のチアキ・コバヤシ博士率いる女性宇宙物理学研究者による国際研究チームは、この種の研究としては初めて、既存の観測データを分析し、周期表すべての元素の起源調査を行いました

例えば炭素の生成は、半分は重い星の超新星で生成されますが、残りの半分は瀕死の低質量星で生成されます。また鉄は半分近くが大質量星の超新星爆発で生成されますが、もう半分は白色矮星が起こすⅠa型超新星によって生成されます。

そして、この研究で明らかになったのが、中性子星の衝突による重元素生成は思ったより少ないということでした。

研究チームの1人、モナッシュ大学の宇宙物理学者アマンダ・カラカシュ博士は、「もっとも楽観的な中性子星の衝突頻度の推定値でも、宇宙に存在する金などの元素量を説明するにはまるで足りませんでした」と述べています。

では、重元素はどこで生まれているのでしょうか?

研究チームによると、これは磁気回転超新星爆発というタイプの超新星が原因ではないかといいます。

磁気回転超新星爆発とは、磁場の強い大質量の高速回転する星が起こす超新星爆発のことです。

これはr過程を起こすのに十分なエネルギーを持っていると考えられ、太陽質量の25~50倍の恒星の超新星のごく一部が磁化していれば、中性子星の衝突で不足した分を埋められるかもしれないのです。

ほとんどの重元素の真の供給源が強い磁場を持つ回転する超新星だったというのは、驚きの発見でしたとカラカシュ博士はいいます。

また、研究チームは太陽質量の8倍より軽い星でも、重元素の約半分が生成されていることを発見しました。

瀕死の低質量星ではs過程と呼ばれる中性子捕獲プロセスが働いていますが、これも残りの元素のほとんどを生成しているというのです。

s過程とr過程の違いは、発生する時間スケールが大きく異なる点です。r過程はほんの数秒の間に起きる現象ですが、s過程は数千年という時間をかけて起こる現象です。

中性子星の衝突は過大評価されている

今回の研究結果では、中性子星の衝突が重元素の起源として過大評価されていた可能性が高いことが示されています。

しかし、中性子星の衝突が、現時点で私たちが考えているよりもはるかに頻繁に起きているということが、後に判明する可能性も否定はできません。

また、今回の研究モデルでは、観測されているよりも銀が多く、金が少ないという結果になることも判明しました。

これはなにか計算上で調整を必要とする問題が含まれていることを示唆しています。

重元素の生成方法と、私たちに見えている宇宙の観測的事実には、まだ大きな隔たりがあります。

恒星の核合成には、我々の理解していない側面がまだまだ隠されているのかもしれません。

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