電子ではなく光子を使う「光コンピュータ」を実現可能にする技術が登場!”光子機器”の開発へ前進か

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フォトニック結晶は光コンピューターの回路になる
回路の中で伝達されるのは電子じゃなくて光子でもいい/Credit:Nature
reference: sciencedaily

未来のコンピューター回路は電子ではなく光子が走っている可能性が濃厚になってきました。

9月23日に『Nature』に掲載された論文によれば、電子の代わりに光子を使う光コンピュータ実現にとって最も困難だった過程が突破され、開発が一気に現実味のあるものになったようです。

回路のなかを光子が走るとは一体どういうことなのでしょうか?

電子の代わりに光子を通すフォトニック結晶

フォトニック結晶は特定の光を反射する
フォトニック結晶は内部に光を通す回路になりうる/Credit:筑波大学

電子の代わりに光子を回路に流す光コンピュータの概念は古くから存在しました。

光子は電気的に中性でありながら指向性を持つといった、電子よりも優れた特性を持っており、回路内を伝達する粒子(あるいは波)として適していました。

しかしながら、光子を微細な回路内で通過させるためには、回路の内部が鏡のように光を反射する性質がなければなりません。

光ファイバーがそのような性質を持ち合わせていますが、現在の市販コンピュータでも回路の精密度が数ナノメートルに達しており、光ファイバーそこまでの細かい加工をすることは困難です。

そこで光の伝わり方をナノ単位で制御できる「フォトニック結晶」が着目されるようになりました。

フォトニック結晶は光コンピューターの回路基盤になる
フォトニック結晶の内部を削り出せば光子が通る回路になる/Credit:筑波大学

フォトニック結晶は特定の光の波長のみを反射する性質があり、内部に空間を作ることで光を通す微細な回路として加工可能です。

しかしこれまで、人類の科学力では理想的なフォトニック結晶を作ることは困難とされており、光コンピュータ普及への道に、巨大な壁としてたちふさがっていました。

しかし今回、ニューヨーク大学の研究者たちによって自己組織化(勝手に組み上がってくれる)フォトニック結晶が開発され、巨大な壁に巨大な穴が開いたのです。

自己組織化する結晶とは、いったいどんなものなのでしょうか?

フォトニック結晶を結びつけるのは生物のDNA

フォトニック結晶の構成単位は4粒のプラスチック粒子を結合させたもの
フォトニック結晶の構成単位は4粒のプラスチックの粒子を結合させたもの/Credit:Nature

フォトニック結晶は、基本単位となる4つのプラスチック粒子の塊(コロイド)が、上の図のような、ダイヤモンド型の格子構造をとることで作られます。

ダイヤモンド型の格子結晶は光を反射する優れた能力をもっており、構成単位となる粒子の設計を変更することで、反射させる光の波長を広くコントロールすることも可能です。

しかし既存の技術では、プラスチック粒子をピラミッド型に組み上げることはできても、それらを寄せ集めて巨大なフォトニック結晶とする方法がわかりませんでした

ですが研究チームは上の図のように、まず4つのプラスチック粒子を油滴で一つに凝集させ(上図(1))、次いで中央部の油を表面に押し出し(上図(2))…そして最後になんと、押し出された油滴の表面に1本鎖のDNAを張り付けました(上図(3))。

1本鎖のDNAは構造的に不安定なために、他の鎖と結合して2本鎖になろうとするのです。

それはすなわち、4粒のプラスチックの粒子からなる構造が、他の4粒の構造と自動的に結合して、1つの大きな結晶として自律的に成長していくことを意味します。

生命の設計図であるDNAを接着剤として用いるという、見事な発想がこの技術を生み出しました

電子機器から光子機器への世代交代

フォトニック結晶の自律的な形成
基本となる4粒の粒子がDNAによって結合して自律的に結晶構造を作り上げる/Credit:Nature

時間の経過とともに結晶は自律的に成長し、上の図のような巨大なフォトニック結晶を作り上げます。

あとは結晶を保護酸化物でコーティングするなどして、図のように光子を流す道を作れば、光子回路の完成です。

今回の研究成果により、近い将来、本格的な光コンピュータができるようになる可能性があります。

そうなれば、未来では電子機器ではなく、光子機器が主流になるかもしれませんね。

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