「ペニスの骨」はライバルの精子をメスから”かき出す”ために発達した可能性がある

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イヌをはじめとした多くの動物がペニスの骨を持っている
イヌをはじめとした多くの動物がペニスの骨を持っている/Credit:Manchester Metropolitan University
reference: sciencealert

ペニスの骨は不倫対策のために存在するようです。

10月14日に『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された論文によれば、陰茎骨とよばれるペニスの骨は、ライバルとなる他のオスの精子をかき出すために存在しているとのこと。

複雑な形状の陰茎骨ほど精子を排除する能力に優れており、他のオスの精子を排除して、自分の精子を受精に導けるのです。

そのため古くは、一夫一妻制をとる種は単純な陰茎骨をもち、乱交制の動物ほど複雑な陰茎骨の形状になると考えられていました。

一夫一妻制では競争相手となるライバルの精子を気にする必要がないからです。

しかし事実は逆でした。

一夫一妻制の夫婦形態をとる種のオスほど、より陰茎骨が発達していたのです。

ペニスの形が変わるほどの進化の裏には、いったいどんなストーリーが潜んでいるのでしょうか?

競争に生き残るためペニスを進化させた

ペニスの骨は体の骨と接続していない独立した骨
ペニスの骨は体の骨と接続していない独立した骨/Credit:Manchester Metropolitan University

近年の研究により、一夫一妻制の家族形態をとる動物の遺伝分析が進んでいます。そこでは、メスが恒常的にパートナー以外のオスと交尾を行い、そのオスの子供を産んでいることがあると明らかになってきました。

メスの生殖戦略にとって、夫の庇護を受けながら、別の強いオスの子供を育てることは理想と言えるでしょう。

そのため動物の世界の社会的一夫一妻制の多くは、遺伝的には一夫一妻とは程遠いものになっています。

そんな仁義なき競争の世界で子孫を残すために、オスはより強く、より広い縄張りを維持できるようにならなければなりません。

しかし一部の動物のオスたちは、よりコストパフォーマンスに優れた方法を選びました。

それがペニスの骨です。

究極の進化をみせたペニスの骨

ラーテルのペニスの骨は非常に効果的な構造をしている
ラーテルのペニスの骨は非常に効果的な構造をしている/Credit:Manchester Metropolitan University

今回の研究では様々な動物の陰茎骨の3D分析が行われ、陰茎骨の様々な機能が明らかになりました。

陰茎骨はライバルのオスの精子をかき出すだけでなく、交尾時間を劇的に増大させることでメスの占有時間を延ばすとともに、メスの体内を効果的に刺激して排卵を促し、確実な受精を行うといった機能があったのです。

ペニスの骨がもたらす高い受精率は、縄張りを維持するコストや他のオスとの争いも必要なく、最小限の変化で最大の効率をもたらす非常に効果的な手段でした。

しかし進化したペニスの骨が成功しても、周りが自分たちのペニスの骨を引き継いだ子孫で満たされると状況は振り出しに戻ります。

あとは競争が延々と続き、より優れたペニスの骨を持った個体が勝者となるだけです。

そんな進化の末に、最も奇抜な陰茎骨を持るに至ったのは、ラーテルのオスでした。

ラーテルのオスの陰茎骨は上の図のように、先端がカップ状になっており、ライバルの精子をメスの体内からこそぎ落とすように排除できます。

また強くペニスを押し込むことで、メスの子宮口を覆うようにカップが包み込み、子宮内部に向けて精子を漏らすことなく送り届けることが可能になります。

ラーテルは夫婦仲が非常によく、ペアで行動することが多いと言われています。

またメスが発情期になると、オスはメスを巣穴で保護して、最大で3日間にわたり休む間もなく交尾を続けるとのこと。

そんな仲睦まじく独占欲が強いラーテルですが、このペニスの骨をみると、その夫婦仲も疑わしいのかもしれません。

ペニスの力学的分析

ラーテルの画像。気性が荒いことで有名
ラーテルの画像。気性が荒いことで有名/Credit:wikipedia

今回の研究により、一部の動物のオスたちは、ペニスの骨を使った激しい戦いを、メスの体内で繰り広げていることが明らかになりました。

メスに確実に自分の子供を産ませるためには、縄張り内部でメスを物理的に独占するだけでなく、より優れたペニスの骨を持つ必要があったのでしょう。

研究者たちは、より精巧なペニスの骨を持つオスたちは、より激しい性的競争を強いられていたと結論付けています。

またより激しい競争が乱交型の生殖ではなく、ライバルのいないはずの一夫一妻制で起きていたという事実は、夫婦関係は競争の終わりではなく、より高度な戦いの始まりであることを示唆します。

人間の場合、幸か不幸かペニスの骨はありません。

ただ近年の研究により、人間のペニスも亀頭部分のふくらみが精子をかき出す役目をしており、男性が射精後に動きを止めるのは、自分の精子を自分でかき出すのを防ぐためだとする研究報告もあがってきています。

研究チームは今後、ペニスの骨だけでなく肉の部分の構造も取り込み、より詳しいペニスの力学的なふるまいを調べる同時に、メスの体内構造の分析も進めていくとのことです。

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