これまでで「もっとも短い時間」の測定に成功! 想像を絶する”ゼプト秒”の世界とは

ゼプト秒測定の概略図。光子(黄色点)は、水素原子(赤点)の電子雲(灰色)から電子波を生成し、干渉縞(紫と白)を生み出します。
ゼプト秒測定の概略図。光子(黄色点)は、水素原子(赤点)の電子雲(灰色)から電子波を生成し、干渉縞(紫と白)を生み出します。 / Credit:Sven Grundmann, Goethe University Frankfurt

時間はどこまで細かく知ることができるのでしょうか?

ドイツのゲーテ大学のレインハード・デルナー教授のチームは、これまででもっとも短い時間の測定に成功したと、10月16日の科学誌『Science』に研究を発表しています。

それはゼプト秒(10垓分の1)単位の時間測定で、光子が水素分子を横切るのにかかる時間だといいます。

 

短時間測定の世界記録 ゼプト秒とはどのくらい?

時間の螺旋。
時間の螺旋。 / Credit:depositphotos

1999年、エジプトの化学者アハメッド・ズウェイル氏は分子の形状が変化する時間測定に成功しノーベル賞を受賞しました。

このとき彼が測定した時間はフェムト秒(1000兆分の1)単位の時間です。化学結合の形成と破壊は、この時間単位の中で発生しています。

しかし、現代の研究はそれを大きく進展させさらに短い時間の測定に成功しました。

それはゼプト秒という単位の時間です。ゼプトは日本語で「清浄(せいじょう)」と呼ばれる単位で10垓分の1を意味しています。垓(がい)ってどのくらいだよ、という人がほとんどでしょうが、垓は「10億分の1」に「1兆分の1」を掛けた値で、「0.」の後に「0」が20個並ぶ小数です。

以前から研究者はゼプト秒の領域で時間測定を行っていて、2016年科学誌『Nature Physics』に報告された研究では、レーザーを使って850ゼプト秒の測定に成功しています。

今回の研究は、子が水素分子を通り抜ける時間の測定に成功し、その時間は247ゼプト秒だというのです。

水素分子を光が駆け抜ける時間の測定

ドイツ・ハンブルクにある粒子加速器ドイツ電子シンクロトロンのX線実験施設PETRAⅢ。

この非常に短い間時間を測定するために、研究チームはドイツ・ハンブルクにある粒子加速器ドイツ電子シンクロトロン(通称: DESY)の「PETRA III」を使用しました。

「PETRA III」は非常に短波長のX線を照射することができる実験設備です。

チームはこのX線を使い、1個の光子が水素分子内の2つの電子に相互作用するよう設定しました。

水素分子では2つの電子を共有している。実際の電子は確率の雲となって電子殻に収まっている。
水素分子では2つの電子を共有している。実際の電子は確率の雲となって電子殻に収まっている。 / Credit:化学コラム

水素分子には2つの電子があります。分子を通り抜ける光子は、水切りで平たい石が水面を弾いて飛び水面に波紋を広げるように、2つの電子に連続で相互作用して電子波を生成させます

ここで発生した電子波は互いに干渉し、干渉縞を作り出します。

そして研究チームはCOLTRIMS (冷却標的反跳イオン運動量分光法)反応顕微鏡という非常に高感度の装置を使って、水素分子の空間配置を測定しました。

この測定により水素分子の空間的な位置がわかったので、そこから2つの電子波の干渉を利用して、光子がいつ1番目の水素原子に到達し、いつ2番目の水素原子に到達したか正確に計算したのです。

 

水素分子内の電子に光子が連続でぶつかり生成した電子波の干渉縞から時間を測定した。
水素分子内の電子に光子が連続でぶつかり生成した電子波の干渉縞から時間を測定した。 / Credit:Sven Grundmann et al.,Science(2020),arXiv

この分子内を抜ける光子の習慣的な時間は、水素原子間の距離によって多少誤差が生じる可能性があります。しかし、本質的にこの測定は分子内を駆け抜ける光速を捉えているのです。

こうして測定された時間は247ゼプト秒でした。

分子内に生じる時間差

このなんとも細やかな測定によって、水素分子内にある水素原子の間を光子が通り抜ける時間が測定されました。

この研究は、分子内の電子殻が同時に光に反応していないということを初めて観測した記録でもあります。

たとえ小さな分子の中であっても情報は光の速度でしか拡散しません。そのため光に反応する電子殻にも、位置によって時間差が生じているのです。

想像を絶する短時間ですが、そこにも確かに時間差があるようです。時間とはどこまで細かく見ていくことができるのでしょうか。

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