世界初、”寒中水泳”をする人から「認知症を予防するタンパク質」を検出!

寒中水泳が認知症の予防に?
寒中水泳が認知症の予防に? / Credit: jp.depositphotos
reference: bbc, iflscience

イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームは、寒中水泳に認知症のような神経変性疾患を予防する可能性があることを発表しました。

同チームが2015年に発表した研究で、「RBM3」という低温ショックタンパク質にマウスの認知症の進行を抑制する効果が特定されており、このタンパク質は主に冬眠をする哺乳動物に見られます。

しかし、この度の最新研究により、寒中水泳をする人の血中から世界で初めてRBM3タンパク質が検出されたのです。

本研究は、科学雑誌にはまだ掲載されておらず、オンライン上で発表されています。

冬眠する動物は自動で脳を修復していた?

「冬眠能力」を持つ熊(クマ)
「冬眠能力」を持つ熊(クマ) / credit: depositphotos

研究チームは以前より、多くの哺乳類に見られる冬眠能力」に注目してきました。

認知症やアルツハイマーのような神経変性疾患は、初期段階に、内の細胞間の接合部分である「シナプス」を破壊し始めます。それが進行すると、記憶障害といった認知症の症状が現れ、最終的に脳細胞全体を破壊します。

一方で、チームの興味を引いたのは、冬眠を始めた哺乳動物でもシナプスの結合破壊が見られることです。

彼らのシナプスは、冬眠している間に約20〜30%が失われていました。ところが、春に目覚めて体温が上昇すると、シナプスの結合も再形成されていったのです。

これは自然な脳機能の修復を意味するのですが、その鍵は哺乳類が持つ「低温ショックタンパク質(英: cold-shock protein)」にありました。

脳を回復させる「低温ショックタンパク質」とは

同チームは2015年に、シナプスの再形成を促す低温ショックタンパク質の「RBM3」を発見しています。

実験では、健康なマウスと変性疾患を持つマウスの体温を35度以下になるまで冷やしました。それから体を温めてみると、健康なマウスにのみシナプスの再形成が見られています。

原因は、RBM3が健康なマウスの体内で上昇し、変性疾患を持つマウスでは上昇しなかったことにありました。

その後、RBM3を人工的に上昇させることで疾患を持つマウスでも脳機能を修復できることが証明されています。

研究主任のジョバンナ・マルッチ氏は、この結果を受け、「RBM3の生産を促す新薬があれば、認知症の予防や回復に役立つかもしれない」と考えました。

しかし、ヒトの血中でRBM3が検出されたことは一度もなかったのです。

ヒトの血中に初めて「RBM3」を発見!

血中にRBM3を発見
血中にRBM3を発見 / credit: depositphotos

そこで研究チームは、冬眠のような低温環境がRBM3を生産する可能性に注目し、ロンドンで寒中水泳をするグループを対象に調査を行いました。

対照群として、同じ地域に住む寒中水泳をしない人々にも協力してもらい、血中のタンパク質を調べています。

2016〜18年の冬時期に実施した調査の結果、寒中水泳をする人の多くにRBM3の上昇傾向が見られたのです。ちなみに、寒中水泳をした後の平均体温は34度となっていました。

対照群には、RBM3の上昇や低体温も見られていません。

マルッチ氏は「冬眠する動物と同様に、ヒトも低温ショックタンパク質を生産できる証拠である」と述べています。

「寒中水泳はしない方がいい」、その理由は?

寒中水泳をするリスクは大きい
寒中水泳をするリスクは大きい / credit: depositphotos

しかし、マルッチ氏は「冷水に浸かるリスクが潜在的な有益性を上回るため、寒中水泳はしない方がいい」と指摘します。

低温環境は人体に強い影響を及ぼし、心拍数や血圧を急激に上昇させ、基礎疾患のある人では心臓発作や脳卒中を引き起こすことがあります。健康な人でも冷水に長時間いると反応速度が鈍くなり、脳が混乱して、水中から自力で出られなくなるのです。

ポーツマス大学のヘザー・マッセイ博士は、寒中水泳をする際の留意点を挙げています。

・冷水に浸かる前に、基礎疾患がないこと、体調が万全であること

・冷水に慣れている人や監視人の付き添いがあること

・寒くなったらすぐに出る

・水中から出た後に、すぐ体を温められる衣類や室内を準備

・できるだけ体を動かして、自然に体温を上げる

・すぐに熱いシャワーや湯船に使ってはいけない(変則的に血圧が変化することで失神リスクが高まるため)

これを踏まえ、マルッチ氏は「寒中水泳を認知症予防の手段にするよりも、ヒトの体内でRBM3の生産を促進する新薬を開発することが重要」と結論します。

そのため、認知症予防といって、無理して寒中水泳をするのは控えた方が良さそうです。

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