帽子を「ツノ」にすることで生存率アップ!
ウラバ・ルーゲンスは、オーストラリアとニュージーランドに生息する蛾です。
幼虫時のサイズは約2センチと小さく、白い体毛に覆われたよく見るケムシの姿ですが、奇妙な習性を持っています。
脱皮した頭の殻を頭上にどんどん積み上げていくのです。
ウラバ・ルーゲンスのケムシは、最大13回の脱皮を繰り返しますが、頭を積み始めるのは4回目の脱皮からと決まっています。
おそらく、それ以前の殻は小さすぎるのでしょう。
頭の殻を完全に脱ぎ去るのではなく、一部をくっつけた状態にしておくことで、脱皮ごとに自然と積み上がっていきます。
帽子をかぶっているような姿から、『不思議の国のアリス』に登場する「マッド・ハッター」と、ケムシを意味する「キャタピラー(caterpillar)」をもじって、「マッド・ハッターピラー(mad hatterpillar)」と呼ばれています。

専門家に言わせると、「この習性は非常にめずらしい」とのことです。
ほとんどの虫は、脱皮した皮を自らの食料にするか、捨ててしまいます。
また、積み上げた頭は単なる見せかけではなく、天敵から身を守る効果があります。
例えば、鉗子(かんし)を使って擬似的に攻撃してみると、彼らは帽子のような頭を後ろにそらして、弱点である背中を守ろうとするのです。

さらには、頭を振り回して、ツノのように使うこともあります。
2016年の実験では、帽子のあるケムシとないケムシで、天敵のサシガメに対する生存率を調べました。
すると、帽子のない個体は簡単にやられるのに対し、帽子がある個体は、相手が間違ってツノの方を攻撃したり、ツノの動きに妨害されることで捕食を諦めることが確認されています。
このようにウラバ・ルーゲンスのケムシたちは、少しでも生存率を高めるため、捨てるべき殻まで再利用しているのです。