種の繁栄を助ける「救世主」となるか
北米に分布するクロアシイタチはかつて絶滅した種と考えられていましたが、1981年に少数の個体群が野生下で見つかり、保護されました。
それ以来、専門家と自然保護活動家が協力して、クロアシイタチの飼育下繁殖計画を開始しています。
クローン作成に参加した環境保護団体「Revive&Restore」によると、現時点で約250〜300頭が飼育下に、さらに300頭が野生の再導入地に生息しているとのことです。
しかし、それらの個体は、繁殖開始時にいたわずか7頭の子孫であり、すべてに近縁関係があります。
そのため、遺伝的多様性に乏しく、健康障害や特定の感染症にかかりやすくなっており、個体数の回復もかなり困難な状況です。
ところが、エリザベス・アンの細胞は、1988年に亡くなった「ウィラ」というメス個体のものであり、彼女は最初の7体の内に含まれていませんでした。
なので、エリザベスの持つウィラの遺伝子は、現生するクロアシイタチの遺伝的バリエーションを広げ、種の繁栄をもたらすきっかけとなります。
クローン計画は2013年からスタートし、昨年のエリザベスの誕生でついに初成功となりました。
エリザベスの繁殖計画への参加はまだ先になりますが、現在は、何の問題もなくスクスクと健康に育っているようです。
Revive&Restoreの事務局長を務めるライアン・フェラン氏は「エリザベスは、彼女自身の種だけでなく、あらゆる場所で絶滅に瀕している生物にとっても、新たな時代の先駆者となります。
彼女の存在は、生物多様性と遺伝的救済にとっての大きな勝利でしょう」と述べています。