アラネイフォーム地形と呼ばれるドライアイスが昇華したとき形成される放射状の地形。
アラネイフォーム地形と呼ばれるドライアイスが昇華したとき形成される放射状の地形。 / Credit:NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona
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火星表面に大量のクモ!? 地球にない奇妙な地形「アラネイフォーム」を再現することに成功

2021.03.23 Tuesday
Trinity researchers tackle the spiders from Mars(Trinity College Dublin) https://www.tcd.ie/news_events/articles/trinity-researchers-tackle-the-spiders-from-mars/
The formation of araneiforms by carbon dioxide venting and vigorous sublimation dynamics under martian atmospheric pressure https://www.nature.com/articles/s41598-021-82763-7

火星の南極には、春先になると地球には見られない奇妙な地形が現れます。

それは黒い放射状の亀裂が大量に出現したもので、まるで黒い蜘蛛の群れのように見えることから「アラネイフォーム地形(Araneiform terrain)」と呼ばれています。

こうした地形は、冬に凍結した二酸化炭素が春になって昇華することで形成されるのだろうと推測されていましたが、これは理論上のものに過ぎませんでした。

3月19日にオープンアクセスジャーナル『Scientific Reports』に発表された新しい研究は、実際にドライアイスを使った実験によってこの地形を作り出すことに成功し、「アラネイフォーム地形」形成の原理について、経験的証拠が初めて得られたと報告しています。

火星の蜘蛛ですが、なにか?

孤立したアラネイフォーム地形。放射状の地形が互いに接触しないとまるで蜘蛛の群れのように見える。
孤立したアラネイフォーム地形。放射状の地形が互いに接触しないとまるで蜘蛛の群れのように見える。 / Credit:NASA/JPL/University of Arizona

うぞうぞと大量の蜘蛛が地面を這っているかのような奇妙な地形。

これが、火星南極に春先になると見られる「アラネイフォーム地形」です。

由来となっている「Araneiform」とは、「蜘蛛のような」という意味を持っています。

アラネイフォーム地形は、放射状に地面が割れてできたもので、その割れ目に暗い塵が堆積したことで、遠目にはまるで蜘蛛のような形に見えます。

地球では見られない地形のため、何がそれを作っているのか理解するのは難しい問題です。

しかし、現在もっとも支持されているのは2007年に地球物理学者のヒュー・キーファーが発表した「キーファーの仮説」と呼ばれるメカニズムです。

火星は大気圧が低く、その大気組成の約95%が二酸化炭素で構成されています。また太陽からは地球より遠く、1つの季節は地球の2倍の期間続きます。

そのため、冬になると南極では地表が凍結した二酸化炭素(CO2)、つまりドライアイスで覆われます。これが春になって温まると、温度の上がりやすい地面との接触面から、ドライアイスが昇華し始めます。

そして、ドライアイスの割れ目から圧力が逃げるように、一気に放出されます。このとき、ドライアイスと地面の接触部分にはガスの逃げ道が削られて、亀裂が走ります。

これは地下の物質を掘り返して堆積させます。さらに周囲が温まって、ドライアイスのすべてが昇華されると、後には放射状に削られた地面だけが残ります。

これがアラネイフォーム地形が作られるメカニズムだと、キーファーの仮説は説明しています。

アラネイフォーム地形の拡大。それが放射状の割れ目だとわかる。
アラネイフォーム地形の拡大。それが放射状の割れ目だとわかる。 / Credit:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

南極の一部の地域でこの地形が目立つのは、そこの地面が古く表面が侵食されやすいためだと考えられます。

このキーファーの仮説は10年以上支持されてきましたが、実際そのプロセス自体が観察されたことはなく、地球には存在しない地形のため、実際本当にこの方法でアラネイフォーム地形が刻まれるかどうかの、経験的な証拠は不足していました

そこで、トリニティ大学のローレン・マッキーン博士の研究チームは、実験室でこのプロセスを再現する実験を設計したのです。

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