お酒の分解は実は肝臓以外に脳でも行われていた。
お酒の分解は実は肝臓以外に脳でも行われていた。 / Credit:canva
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お酒は肝臓だけでなく「脳」でも直接代謝されていた

2021.03.25 Thursday
Our Brains Could Be Directly Involved in Processing Alcohol, Mouse Study Hints(sciencealert) https://www.sciencealert.com/mice-study-suggests-alcohol-compound-directly-metabolizes-in-the-brain-not-the-liver
Brain ethanol metabolism by astrocytic ALDH2 drives the behavioural effects of ethanol intoxication https://www.nature.com/articles/s42255-021-00357-z

お酒を飲むと、アルコールは肝臓で分解され、そこで生成された「代謝物」が血流で脳へ運ばれ、酔いの症状が発生します。

これまで、酔っ払うという状態はそのように説明されていました。

しかし、3月22日にオープンアクセスジャーナル『Nature Metabolism』で発表された新しい研究は、マウスを使った調査から、アルコールが肝臓だけでなく脳でも直接代謝されている証拠を発見したと報告しています。

アルコールの代謝は、肝臓だけの仕事ではなかったのかもしれません。

お酒で酔っ払う原因

酔っ払う原因は、アルコールの代謝物である酢酸塩が脳の伝達物質を阻害するため。
酔っ払う原因は、アルコールの代謝物である酢酸塩が脳の伝達物質を阻害するため。 / Credit:canva

人は酔っ払うと、運動能力の低下や、判断力の喪失、集中力の低下などの悪影響を受けます。

この原因は、アルコール(正確にはエタノールですが本記事ではアルコールで統一します)の代謝中に生成される代謝物によって引き起こされると考えられています。

人がアルコール類を飲むと、肝臓で代謝が行われ、まずアセトアルデヒドに分解(酸化)されます

しかし、アセトアルデヒドは人体にとって有なため、次にこれは無毒な酢酸に酸化されます。

このプロセスの中で、アセトアルデヒドを酢酸に変換している酵素がALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)です

この酵素をコードする遺伝子は、人によって異なっていることがわかっています。

遺伝的に体内のALDH2が少ないと、アセトアルデヒドを分解することができず、「フラッシング反応」が発生します

フラッシング反応とは、いわゆる悪酔いした状態のことで顔面の紅潮、吐き気、目まいや動悸などが主な症状です。

フラッシング反応の1つである顔面の紅潮を示した例。
フラッシング反応の1つである顔面の紅潮を示した例。 / Credit:Wikipedia

実は、日本人を含めた東アジアの人は、ALDH2の働きが弱い人が多いとわかっています。

こうした人たちは、アセトアルデヒドを処理できないため、少量のお酒でもひどい酔い方をしてしまいます。

ネットでは飲み会などを嫌う人が多く見られますが、人間関係が煩わしいという他に、そもそも日本人はお酒をほとんど飲めない人が多いのです。

各国のALDH2遺伝子変異の割合。円グラフの緑はALDH2の働きが弱い人の割合を示す。日本は半数近い人がお酒に弱い。
各国のALDH2遺伝子変異の割合。円グラフの緑はALDH2の働きが弱い人の割合を示す。日本は半数近い人がお酒に弱い。 / Credit:Wikipedia

これまでの理解では、このようなアルコール代謝のほとんどは肝臓でおこなわれていると考えられてきました。

ここまでの説明からもわかるように、飲酒による吐き気、めまいなどの気持ちの悪い症状はアセトアルデヒドの毒性によるものです。

酔っ払って運動能力が低下したり、判断力が低下するなど、なんだかクラクラして気持ちのいい状態は、ALDH2がアセトアルデヒドを分解(酸化)して生成した酢酸が、血流によってへ運ばれることで起きると考えられていたのです。

酢酸は血液脳関門を突破して、脳の神経伝達に影響を与えます。

しかし、今回の研究によると、酢酸の出どころは肝臓ではないといいます。

実はアセトアルデヒドを分解し酢酸に変化させる代謝は、脳の中で直接おこなわれているかもしれないのです。

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