ミトコンドリアDNAが身長の高さや糖尿病の発病率などに関連してると判明!
ミトコンドリアDNAが身長の高さや糖尿病の発病率などに関連してると判明! / Credit:Canva
biology

ミトコンドリアDNAが「ヒトの身長の高さや寿命」などに関連していると明らかに

2021.05.18 Tuesday

ミトコンドリアのDNAは私たちの健康を支配しているようです。

5月17日に『Nature Genetics』に掲載された論文によれば、ミトコンドリアが独自に持つDNAが身長や寿命、糖尿病や肝機能など、一般的な健康に幅広く関係しているとのこと。

ミトコンドリアDNAは細胞核にある私たちの通常のDNAとは違なる母系遺伝をすることが知られています。

研究結果が正しければ、核DNAのみを対象とした従来のDNA分析だけでは、個人の遺伝的な特性を十分に解明できないことを示すでしょう。

Mitochondria Inherited from Mother Can Influence Offspring’s Risk of Common Diseases https://www.genengnews.com/news/mitochondria-inherited-from-mother-can-influence-offsprings-risk-of-common-diseases/
An atlas of mitochondrial DNA genotype–phenotype associations in the UK Biobank https://www.nature.com/articles/s41588-021-00868-1#ethics

ミトコンドリアDNAが身長の高さや寿命などに関連してると判明!

ミトコンドリアDNAは一般的な疾患に大きくかかわっていると判明
ミトコンドリアDNAは一般的な疾患に大きくかかわっていると判明 / Credit:Canva

かつて私たちの先祖には酸素呼吸能力がありませんでした。

しかし今からおよそ20数億年前、私たちの先祖は酸素呼吸をしていたミトコンドリアの先祖を細胞内部に取り込むことで、自らも酸素呼吸能力を獲得します。

そして現在に至るまで、ミトコンドリアは私たちの細胞が取り込んだ有機物と酸素を反応させてエネルギーを発生させる一種の燃焼炉として働き続けていました。

私たちの先祖は酸素呼吸能力をミトコンドリアを取り込むことで獲得し、真核生物へと進化した
私たちの先祖は酸素呼吸能力をミトコンドリアを取り込むことで獲得し、真核生物へと進化した / Credit:Canva

永きにわたって細胞の中で飼育されてきたミトコンドリアは独立した生物としてやっていくために必要なDNAを失ってしまいましたが、それでも独自の遺伝子を環状DNAの中に持っています。

しかしこれまでの研究では、ミトコンドリア病などの例外を除いて、ミトコンドリアの独自のDNAの変異が、糖尿病などの疾患と関係があるとは思われていませんでした。

しかしケンブリッジ大学の研究者たちは「違う」と考えました。

ミトコンドリアDNA量は細胞全体の0.1%に過ぎませんが、それでもさまざまな臓器の健康に影響を与える可能性があったのです。

ミトコンドリアDNAは核DNAだけがかかわると考えられて来た要因に影響を与える
ミトコンドリアDNAは核DNAだけがかかわると考えられて来た要因に影響を与える / Credit:Canva

そこで研究者たちはイギリス全土で35万人のミトコンドリアDNAを採取し、個人の健康状態との関連性を比較しました。

すると、意外な事実が判明します。

ミトコンドリアのDNAは糖尿病といったメジャーな病気の発生率にかかわるだけでなく、肝機能や腎臓機能、血球数、さらに身長や寿命といった要因に影響を与える可能性がありました。

この結果は、ミトコンドリアの小さなDNAが、私たちの健康に幅広くかかわっていることを示します。

しかし、なぜ全体の0.1%に過ぎないDNAが、ここまで大きな影響を持つのでしょうか?

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