ほっぺに手を当てるラッコ
ほっぺに手を当てるラッコ / Credit: Harry Walker-Naturally funny: Wildlife photographs offer light-hearted approach to conservation(2019)
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ラッコの細胞には「暖房機能」があった!体を動かさなくても熱をつくれると明らかに

2021.07.10 Saturday

Sea otters stay warm thanks to leaky mitochondria in their muscles https://www.sciencenews.org/article/sea-otter-warmth-mitochondria-muscle-metabolism-biology
Skeletal muscle thermogenesis enables aquatic life in the smallest marine mammal https://science.sciencemag.org/content/373/6551/223/tab-figures-data

水棲哺乳類として有名なラッコですが、実は、冷たい海で暮らすには少々無理な体をしています。

クジラやイルカに比べて体が小さく、皮下脂肪も少ないため、熱がどんどん逃げていくのです。

おまけに手の平には毛がなく、そこから熱が奪われるのを防ぐため、ラッコはほっぺに手を当てたりします。

しかし、それだけで体温を維持するのは不可能でしょう。

「水温0〜15℃の環境で、ラッコはなぜ37℃前後の体温を維持できるのか?」

テキサスA&M大学(Texas A&M University・米)らの最新調査により、その答えは、筋肉細胞の働きにあったことが判明しました。

研究は、7月9日付けで学術誌『Science』に掲載されています。

 

ラッコの筋肉細胞には「暖房機能」があった

ほかの哺乳類は、体温維持のために、大きな体と皮下脂肪に頼ることが多いです。

しかしラッコは痩せていて、毛皮に包まれた小さな樽のような体型をしています。

毛の密度は生物の中で最も高いとされますが、それでも熱の放出を完全に防ぐことはできません。

水の熱伝導率は空気の23倍で、毛皮の断熱性よりも、熱を失うスピードの方がはるかに速いのです。

体を寄せ合うラッコ
体を寄せ合うラッコ / Credit: T. WRIGHT-USFWS MARINE MAMMAL PERMIT NO. MA-043219 TO R. DAVIS

その一方でラッコは、彼らの3倍の大きさの哺乳類と同等の熱生産量、つまり極端な代謝活動をしています。

なので、毎日、自重の約25%ものエサを食べなければなりません。

研究チームは、ラッコの体温維持の秘密が代謝を活性化する「筋肉細胞」にあると考え、その熱源を探す調査を開始しました。

チームは、飼育と野生を含む21頭のラッコを対象に細胞組織を採取。呼吸計(respirometer)を使って、ラッコの筋肉細胞の呼吸能力を測定しました。

(酸素の流れの速さで、細胞の熱生産を間接的に測定できます)

その結果、細胞内のエネルギー生成を担うミトコンドリアで、プロトン・リーク(水素イオンの漏れ)が発生し、蓄積されていた電気化学ポテンシャルが熱として解放されていることが分かったのです。

ちょっと意味不明なので、分かりやすくしましょう。

下のミトコンドリアの模式図を見てください。

1内膜、2外膜、3クリステ(平板状)、4マトリックス
1内膜、2外膜、3クリステ(平板状)、4マトリックス / Credit: ja.wikipedia

ミトコンドリアは一般に、プロトンを内膜(1)に送り込んで、細胞を動かすのに必要なエネルギーを蓄えます。

ところが、プロトンが使われる前にマトリックス(4)に送り返されることがあります。これが「プロトン・リーク」です。

そうなるとプロトンは熱エネルギーとして解放され、多くの熱が発生します。

これがラッコの体温が維持される秘密だったのです。

ところが、プロトン・リークによってエネルギーは急速に失われるため、それを補うべく、ラッコは大量にエサを食べなければならなかったのです。

プロトン・リークは一種の暖房機能
プロトン・リークは一種の暖房機能 / Credit: T. WRIGHT-USFWS MARINE MAMMAL PERMIT NO. MA-043219 TO R. DAVIS

さらに、ラッコの筋肉細胞の呼吸能力の約40%はプロトン・リークによるもので、哺乳類の中で最も高いことが分かりました。

この仕組みによって、ラッコは水温0℃の太平洋でも快適に生活できるのです。

一方で、研究主任のトレイバー・ライト氏は「プロトン・リークは常に稼働しているわけではない」と指摘。

「おそらく、より多くの暖かさが必要なときに起動するのでしょう。しかし、ラッコの細胞がこのプロセスをどのようにオン・オフするのかはまだ分かっていません」と続けています。

研究チームは今後、ラッコにおけるプロトン・リークがいつ頃から獲得され、いかに機能するかを詳しく解明していく予定です。

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