タランチュラの毒も薬になるらしい
タランチュラの毒も薬になるらしい / Credit:pixabay
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「タランチュラの神経毒」から慢性的な痛みに効く鎮痛剤を開発中

2021.07.28 Wednesday

Turning tarantula venom into pain relief(UC) https://www.universityofcalifornia.edu/news/turning-tarantula-venom-pain-relief

慢性的な痛みを抱える人たちにとって、現在もっとも有効な鎮痛剤はオピオイドです。

しかし、この薬は中毒性があり、医師からしても好ましい薬とはいえません。

そのため、オピオイドに代わる依存症の起こらない新しい薬の開発が進められていますが、ここで意外な物質が注目を集めています。

カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の研究チームは、南米ペルーに生息するタランチュラの神経毒を利用した新しい鎮痛剤の開発を進めているのです。

神経毒は神経伝達をブロックします。その中には痛みのチャンネルに有効なものがあるというのです。

毒を薬に使う

毒と薬は表裏の関係
毒と薬は表裏の関係 / Credit:pixabay

「医化学の祖」と呼ばれるパラケルススは、「すべてのものにはがあり、毒のないものなどない」と語りました。

私たちが服用する薬とは、基本的に体にとっては毒と変わりがありません。

ただ、その効能が私たちにとって有害に働くか、有益に働くかで、「毒」と「薬」という呼び方を使い分けているに過ぎないのです。

そして服用量によっては薬も毒になると、パラケルススはいいました。

その言葉通り、有効な薬であっても、危険な効能を持つ薬があります。

それが慢性疼痛を患う人たちが使うオピオイドという薬です。

慢性疼痛の定義は、外で働いたり、学校へ行く、家事を行うなどの日常的な活動が制限されるほどの痛みが3カ月以上続くこととされています。

生活に支障をきたす強い痛みが長期間続く慢性疼痛
生活に支障をきたす強い痛みが長期間続く慢性疼痛 / Credit:canva

こうした強い痛みに対しては、イブプロフェンやアスピリンといった鎮痛剤では十分な効果が得られません。

そこで活躍しているのがオピオイドという強力な鎮痛剤ですが、残念ながらこの薬は万能ではなく、使用することで徐々に耐性ができていき、使用者が中毒になってしまうのです。

慢性的な痛みを和らげるための非オピオイド系の薬というものも用意されてはいますが、あくまで補完的なものに過ぎず、慢性疼痛を患う人が痛みを抑える選択肢は限られているのです。

米国ではこうした慢性的な痛みを患う人は成人の20%に達するとされています。

医学界では、こうした問題を解決するため、オピオイドに代わる新しいタイプの鎮痛剤の登場が待たれているのです。

そして、今回のカリフォルニア大学の研究チームが中毒性のない治療法として着目したのが、タランチュラの毒を使うというものでした。

なんで毒? と思うかもしれませんが、先に述べた通り、薬と毒は表裏の関係です。

研究を主導するカリフォルニア大学デービス校のブルース・ハモック(Bruce Hammock)教授は次のように語ります。

クモやサソリは、何百万年もの進化を経て、毒液中のペプチド(アミノ酸が一本の鎖状につながったもの)を最適化させてきました。

痛みや神経機能障害を引き起こす毒物は、同時に神経の働きを良くして痛みを軽減することもできるのです

長い進化の歴史の中で築かれた、神経に干渉する化学結合を利用しようというのが、この研究の狙いなのです。

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