約1600年前の「抱擁した男女の遺骨」を発見
約1600年前の「抱擁した男女の遺骨」を発見 / Credit: Quanchao Zhang et al., International Journal of Osteoarchaeology(2021)
history archeology

「永遠につづく愛」1600年前の”抱擁したまま埋葬された男女”が中国で見つかる

2021.08.27 Friday

中国北部・山西省にて、抱擁したまま埋葬された男女の遺骨が発見されました。

埋葬時期は、約1600年前の北魏時代(386〜534年)に当たると見られます。

二人の関係性が恋人なのか夫婦なのかは分かりませんが、「永遠の愛」を誓った男女であることは確かなようです。

研究は、6月4日付けで学術誌『International Journal of Osteoarchaeology』に掲載されています。

1,500-year-old burial in China holds lovers locked in eternal embrace https://www.livescience.com/buried-lovers-embrace-china.html 1,600-Year-Old Skeletons in Lovers Embrace Found in North China https://www.ancient-origins.net/news-history-archaeology/lovers-tomb-0015724
Eternal love locked in an embrace and sealed with a ring: A Xianbei couple’s joint burial in North Wei era, China (386–534 CE) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/oa.3009

男性の後を追って、女性が自殺した可能性

2020年6月、山西省・大同市にて、建設工事中に露出した地面から共同地が発掘されました。

この墓地には、中国北部の古代遊牧民である「鮮卑族」の墓が約600基見つかり、墓の形状や出土した陶器から、北魏時代(386〜534年)のものと判明しています。

抱擁した男女の遺骨は、その中で発見されました。

男女の墓は合葬墓(がっそうぼ)と呼ばれるもので、同じ棺桶に二人の遺骨が納められています。

男性は左を下に横たわり、両腕で女性の腰あたりを抱きかかえるような姿勢を取っていました。

一方の女性は右を下に横たわり、男性の肩に頭を乗せるような形になっています。

女性の左足は少し曲げられており、左手の薬指には指輪がはめられていました。

抱擁したまま発掘された男女の遺骨
抱擁したまま発掘された男女の遺骨 / Credit: Quanchao Zhang et al., International Journal of Osteoarchaeology(2021)
埋葬時のイメージ復元
埋葬時のイメージ復元 / Credit: Quanchao Zhang et al., International Journal of Osteoarchaeology(2021)

吉林大学(きつりんだいがく)の考古学研究チームは、男女が亡くなった際にどのような状態にあったかを調べるため、遺骨を分析。

その結果、男性の方はかなり病弱で、健康面に問題があったことが分かりました。

遺骨の全長は約162センチで、右腕に病的な骨折痕、右手の指の一部の欠損、右足の骨棘(こつきょく・関節部の軟骨が肥大し、硬化してトゲのようになる症状)など、複数の傷が見られています。

推定される死亡年齢は、29〜35歳とのことです。

対照的に、女性の方は虫歯がいくつかあったぐらいで、死亡時もいたって健康であったことが判明しました。

遺骨の全長は約157センチで、年齢は35〜40歳の間と見られます。

女性の指にはめられていた指輪
女性の指にはめられていた指輪 / Credit: Quanchao Zhang et al., International Journal of Osteoarchaeology(2021)

北魏時代の「抱擁する男女の遺骨」は、これまでにも複数見つかっていますが、今回ほど保存状態の良いものは初めてとのこと。

当時は、中国北部にいた鮮卑族が南下し、漢民族の文化と和合していった時代でした。

とくに、共同墓地が出土した大同市は、民族混合の中心地として知られます。

また、女性がつけていた指輪は、北魏時代からアクセサリーとしての機能が薄まり、次第に結婚の誓いを示すシンボルとして、中国北部に広まり始めていました。

この男女が、漢民族と鮮卑族の夫婦だったのか、それから、どういう経緯で一緒に埋葬されたのかは分かっていません。

研究チームは「暴力や病気、毒殺などの証拠が見当たらないことから、自殺した可能性が高い」という見解を示しています。

もしかしたら病弱な男性の後を追って、女性が自ら命を絶ったのかもしれません。

論文内には、「死因とは別に、埋葬のメッセージは明確でした。二人は永遠の愛を誓い、死後の世界でも一緒にいるために抱き合ったまま埋葬されたのでしょう」と記されています。

研究チームは二人の意思を尊重し、将来的に博物館で展示できるよう、抱擁したままの状態で保管しているとのことです。

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