数世紀を経て蘇った「キューピッドの立像」
フェルメールは、写実的な描写力と緻密な空間構成、そして光を用いた質感表現において、その天才性を発揮しました。
代表作に、『真珠の耳飾りの少女』や『天文学者』があり、歴史の教科書などで一度は目にしたことがあるでしょう。
![『真珠の耳飾りの少女』1665年頃、マウリッツハイス美術館所蔵](https://nazology.net/wp-content/uploads/2021/08/Johannes_Vermeer_1632-1675_-_The_Girl_With_The_Pearl_Earring_1665.jpeg)
![『天文学者』1668年頃、ルーヴル美術館所蔵](https://nazology.net/wp-content/uploads/2021/08/300px-Johannes_Vermeer_-_The_Astronomer_-_WGA24685.jpeg)
『窓辺で手紙を読む女』も彼の傑作の一つです。
開け放たれた窓から光が差し込む室内に、手紙を読む女性が描かれています。
先述したように、1979年のX線調査で”画の中の画”が隠されていること分かりましたが、長年の間、その画を消したのはフェルメール本人だと考えられていました。
ところが、2017年の再調査により、フェルメールではない何者かの手で塗りつぶされたことが新たに発覚したのです。
![修復前の『窓辺で手紙を読む女』1659年頃、アルテ・マイスター絵画館所蔵](https://nazology.net/wp-content/uploads/2021/08/300px-Jan_Vermeer_-_Girl_Reading_a_Letter_at_an_Open_Window.jpeg)
そのため、翌年の2018年から上塗り層を取り除く修復が開始されました。
作業は、顕微鏡で確認しながらメスや綿棒を用いて、慎重に行われています。
およそ3年の修復作業の結果、弓矢を手にしたキューピッドの立像を復元することに成功しました。
目の前の地面には仮面が二つ転がっており、キューピッドはそのうちの一つを踏みつけています。
![修復後](https://nazology.net/wp-content/uploads/2021/08/Reading_1-472x600.jpeg)
こうして、フェルメールが描いた真の『窓辺で手紙を読む女』が、数世紀の時を経て、現代に蘇りました。
また、同絵画館のオールドマスター絵画・彫刻コレクションのディレクターであるステファン・コジャ(Stephan Koja)氏は「これまでは、作中の女性がどんな内容の手紙を読んでいるのか、分かりませんでした。
しかし、キューピッドの復元により、フェルメールが本作で描こうとした真の意図が見えてきた」と話します。
それは一体、何なのでしょう。
そして、誰が何のためにキューピッドを隠したのでしょうか。