フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物が発見! 動物実験でも効果確認
フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物が発見! 動物実験でも効果確認 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物を発見!

2021.09.03 Friday

がん治療の未来はフキノトウが握っているかもしれません。

9月1日に、日本の岐阜大学の研究者たちにより『The Journal of Clinical Investigation』に掲載された論文によれば、日本原産のフキノトウの苦味成分から、極めて強力かつ副作用の少ない、抗がん作用のある化合物「ペタシン」が発見されたとのこと。

効果は動物実験においても確認されており、がんになったマウスの腹腔(横隔膜の下)にペタシンを投与することで、がん細胞の増殖と転移を防ぎ、縮小させることにも成功

さらにマウスの体には、目立った害も現れなかったそうです。

しかし、どうしてペタシンに、これほどの抗がん作用があったのでしょうか?

以下では、発見につながった研究者たちの地道な努力を紹介しつつ、ペタシンの秘密に迫っていきます。

日本原産フキノトウから  がんの増殖・転移を強く抑制する物質を発見 https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20210826.pdf
Petasin potently inhibits mitochondrial complex I–based metabolism that supports tumor growth and metastasis https://www.jci.org/articles/view/139933

フキノトウから抽出されたペタシンはがん細胞のミトコンドリアを攻撃する

フキノトウから抽出されたペタシンはがん細胞のミトコンドリアを攻撃する
フキノトウから抽出されたペタシンはがん細胞のミトコンドリアを攻撃する / Credit:岐阜大学

あまり知られていない事実ですが、がん剤の開発方法は非常に地味です。

がん細胞に対して考え付く限りの化合物を加え、効果があるものを網羅的に探索していく、という過程が多くを占めるからです。

日本の岐阜大学の研究者たちもまた、この過酷な探索作業に従事していました。

が……探し方に、いくつかユニーク点がありました。

抗がん剤を探すにあたってのターゲットを、主にアジア原産の薬草や食用植物に絞ったのです。

漢方薬などに使われる薬草には未知の薬効成分が含まれている可能性があるほか、食用植物ともども、人体に対する毒性が比較的低いと期待されるからです。

また探索方法にも工夫がこらされ、植物から得られた成分を、422種類の抽出物を中心に、独自のカテゴリーに分類。

網羅的な探索に適したシステム(ライブラリー)を構築しました。

結果、日本原産のフキノトウ(学術名:Petasites japonicus)から抽出された「ペタシン」と呼ばれる有機化合物が、広範ながん細胞(乳がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、膀胱がん、前立腺がん、悪性黒色腫、肉腫、白血病)に対して非常に強い増殖抑制効果を示す一方で、正常な細胞に対して副作用が少ないことを発見します。

またペタシンに接した、がん細胞の様子を分析したところ、がん細胞内部のミトコンドリアがひどく損傷していると判明。

ミトコンドリアは細胞のエネルギー生産を担う重要な小器官として知られており、がん細胞の異常な活動力の供給源としても機能しています。

どうやらペタシンには、正常な細胞には害を加えず、がん細胞のミトコンドリアを狙い撃ちにするという、不思議な性質を秘めているようです。

細胞レベルでの効果に手ごたえを感じた研究者たちは、次に動物実験へと移りました。

ペタシンは培養皿の細胞だけでなく、生きた動物のがんも治療できたのでしょうか?

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