もろく扱いの難しい高温超伝導線材超による超伝導接合を実現させ年単位の安定的な永久電流維持に初めて成功した
もろく扱いの難しい高温超伝導線材超による超伝導接合を実現させ年単位の安定的な永久電流維持に初めて成功した / Credit:depositphotos
physics

電気抵抗のない超伝導技術で「2年間永久電流を流すこと」に日本が初成功

2021.09.27 Monday

電気抵抗のない高温超電導接合で2年間の永久電流運転に世界で初めて成功 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210924/index.html
Development of a persistent-mode NMR magnet with superconducting joints between high-temperature superconductors https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6668/ac2120

非常に低い温度まで冷やしたとき、物質は電気抵抗がゼロになる超電導現象を起こします。

このとき回路を閉じることができれば、そこには外部からの電流供給なしで永遠に電気が流れ続ける「永久電流」を作り出すこともできるのです。

もちろん理屈としては可能そうでも、実際はスイッチなどの接合部分まで超電導状態を維持しなければならないため、実現は非常に困難な技術です。

しかし、理化学研究所などの研究チームは2018年にこれを実現し、さらにそれから約2年間永久電流を安定的に維持し続けることに世界で初めて成功したと報告しています。

これまで数日間の永久電流保持の報告はありましたが、年単位でこれを実現させたのは今回の研究が初めてです。

この成果は、超伝導理論や技術に関する科学雑誌『Superconductor Science and Technology』に2021年9月17日付で掲載されています。

永久に電流が流れ続ける意味

超低温まで冷やしたとき物質の電気抵抗はゼロになり磁力線が遮断される
超低温まで冷やしたとき物質の電気抵抗はゼロになり磁力線が遮断される / Credit:canva

非常に低温の状態で電気抵抗がゼロになる超電導については、聞いたことのある人が多いでしょう。

ただ、電気工学を学んでいない人にとっては、それがなんなんだ? と思う人もいるかもしれません。

送電線でも家電の中の回路でも、通常あらゆる物質は電気抵抗というものを持っています。

そのため電気は流れ続ける限り少しずつエネルギーを失っていき、最終的には何の仕事をしていなくても電流はなくなってしまいます。

しかし、逆に言えばもし電気抵抗がゼロの物質で閉じた回路を作ることができれば、そこには永久に電流を流し続けることができるのです。

流れ続けるだけで何の仕事もしない電気に何の意味があるんだ、と思う人もいるかもしれません。

けれど、電気はただ流れているだけでも重要な役割を果たします。

それが磁場の発生です。

超電導状態のコイルを流れ続ける永久電流は、強力な磁場を発生させ続けることができ、核磁気共鳴(NMR)装置はこれを利用しています。

NMR装置の構造。日本電子株式会社は今回の研究グループにも参加している企業。
NMR装置の構造。日本電子株式会社は今回の研究グループにも参加している企業。 / Credit:日本電子株式会社

NMR装置とは、磁場中に置かれた原子核との共鳴現象で物質の構造を解析する装置のことです。

物質はすべて原子でできていますが、その中身は電子と原子核です。

原子核は非常に小さな磁石として見ることができ、それは決まった周波数の磁場と共鳴をおこします。これを電気的に測定することで物質の構造を調べることができるのです。

最近アルツハイマー病の発症に肝臓で作られたアミロイドβペプチドが関連しているという研究が発表されましたが、アミロイドβペプチドなどの構造を微量試料から解析するには、超高磁場のNMR装置が必要になります。

こうした医療の現場でも役立つ次世代超高磁場NMR装置の開発に、永久電流という現象は活躍が期待されているのです。

ただ、理屈としては理解できる話でも、実際高い磁場を発生させる超伝導にはいろいろと困難な課題があったのです。

特に永久電流を生み出すためには、コイル部分だけでなく、回路を閉じるためのスイッチ部分も超伝導状態にしなくてはなりません

この超電導接合技術は、高磁場の超電導では特に技術的困難が多くあったのです。

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