寄生バチは、人類の救世主だった?
寄生バチは、人類の救世主だった? / Credit: jp.depositphotos
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ダーウィンもドン引きの寄生バチは2000万人もの命を救っていた (2/2)

2021.11.03 Wednesday

前ページ悪魔か、救世主か

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農薬に比べてメリットだらけ

寄生バチによる害駆除の成功例は、これだけではありません。

英名で「サムライバチ(samurai wasp)」と呼ばれる寄生バチは、アメリカ大陸において、農作物に害をなすクサギカメムシの”成敗”に成功しています。

英名で「サムライバチ」と呼ばれる寄生バチの一種
英名で「サムライバチ」と呼ばれる寄生バチの一種 / Credit: en.wikipedia

他にも、歴史的建造物や遺物に被害を与える蛾を防ぐためにも、寄生バチが用いられています。

カナダでは、森林破壊の原因となっているアオナガタマムシを駆除する目的で、少なくとも4種の寄生バチが放たれました。

しかも、寄生バチに頼ることは、農薬や殺虫剤に比べて、メリットだらけなのです。

まず、農薬や殺虫剤は、人の手で散布しなければならないに対し、寄生バチは自力で繁殖し、害虫を狩ることができます。

また、害虫をピンポイント駆除できるので、農薬のように作物を傷めることもありません。

それから、農薬は繰り返し散布する必要がありますが、寄生バチは自然に世代交代をしてくれるので、一度放つだけで十分です。

さらに、寄生バチは約75万種いると推定され、ほとんどの害虫に対応できると考えられます。

あと大事なポイントですが、人を襲うこともありません。

見た目もスタイリッシュでカッコいい
見た目もスタイリッシュでカッコいい / Credit: jp.depositphotos

その一方で、懸念すべき問題がないわけではありません。

たとえば、害虫を退治するために、外来種の寄生バチを導入することがよくあります。

外来種が馴染みのない土地に入ってくることで、生態系のバランスを崩すおそれがあるのです。

寄生バチではまだ例が記録されていませんが、過去にオーストラリアで、害虫駆除のためにオオヒキガエルを導入しました。

当初の反応が上々だったのですが、毒を持つオオヒキガエルは、それをエサとする在来生物にとって致命的となったのです。

寄生バチにも宿主を麻痺させる毒があるので、それを食べる鳥に影響が出ないとも限りません。

しかし、生態系に害がないと確認できれば、これほど便利な害虫駆除はないでしょう。

彼らがいなければ、世界中の作物のいくつかは、害虫にやられて失くなっていたかもしれません。

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