電磁波のイメージ
電磁波のイメージ / Credit:depositphotos
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絵画のように”止まった波”が現れる物理現象『超放射相転移』が起こる磁石を発見

2022.01.14 Friday

波という現象は、激しく動いて移ろいゆくのが常識ですが、物理学には波が止まった状態を維持する不思議な現象が予言されています。

1973年に予言されたこの不思議な現象は「超放射相転移」と呼ばれていて、温度が下がったとき電磁波が止まった波として現れるといいます。

これは非常にマイナーな現象で、研究者も少ないため50年過ぎても現実で現象を観測した例は報告されていませんでした。

しかし今回、京都大学白眉センター 馬場基彰特定准教授らの国際共同研究グループは、エルビウムオルソフェライト( ErFeO3)と呼ばれる磁性体( 磁石)から超放射相転移を初めて確認したと報告しています。

研究の詳細は、2022年1月10日付で英国の学術誌『Communications Physics』にオンライン掲載されています。

磁石の中で自然と現れる「止まった波」 -超放射相転移が起こる磁石を発見- https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2022-01-12 現象解明 孤高の夢 京大“アナキズム” #7 没頭の衝動 https://the.kyoto/article/kyodai-science1 「超放射相転移」で物理学の新たな領域を切り拓く! 光の研究はどこに向かうのか – 京大白眉センター・馬場基彰 特定准教授 https://academist-cf.com/journal/?p=15673
Magnonic superradiant phase transition https://www.nature.com/articles/s42005-021-00785-z

”止まった波”『超放射相転移』とはなにか?

今回の研究のテーマとなっている「超放射相転移」とはなんなのでしょうか?

相転移というのは、簡単に言えば水が氷になったり、または水が水蒸気になったりする現象のことです。

物質の相転移
物質の相転移 / Credit:天文学辞典

温度というのは、分子の持つ運動エネルギーです。

温度が高くなったり低くなったりすると、水を構成している水素や酸素の動き方が変わります。そのため水の状態が固体・液体・気体・プラズマなどに変化していくのです。

このように温度などの条件変化によって、物質の性質が変化することを「相転移」と呼びます

他にも絶対零度近くまで物質を冷やすと電気抵抗が0になるという超伝導や、600℃以上に加熱すると磁性を失うフェライト磁石などの現象もみな相転移の一種です。

では、この「相転移」という言葉を含む、超放射相転移はどういう現象なのでしょう?

これは研究者によると、物質の状態が変化するだけでなく周囲にある電磁場までが一緒に性質を変化させてしまう現象なのだといいます。

このとき、物質の周囲にある電磁波は、”止まった波”になるのです。

なぜ、そんなことが起きるのでしょうか?

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