若マウスと老マウスの体を縫い合わせて老化と若返りを検証 血には時間が刻まれている
若マウスと老マウスの体を縫い合わせて老化と若返りを検証 血には時間が刻まれている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
biology

若マウスと老マウスの体を縫い合わせた結果「老マウスの細胞」が若返った!

2022.03.07 Monday

Molecular hallmarks of heterochronic parabiosis at single-cell resolution https://www.nature.com/articles/s41586-022-04461-2

若い血液には若返り効果があるようです。

米国スタンフォード大学(Stanford University)で行われた研究によれば、若いマウスと老いたマウスの体を縫い合わせて血液を共有させたところ、若いマウスでは老化が加速し、老いたマウスでは若返りが確認できた、とのこと。

また本研究では、各臓器の細胞から採取された遺伝子の活性パターンが詳細に調べられており(単一細胞RNAシークエンス)、老化と若返りの正体を細胞レベル・遺伝子レベルで解き明かすことに成功しています。

どうやら私たちの血液には触れた細胞の時間を変えてしまう何らかの時間成分が含まれているようです。

研究内容の詳細は2022年3月2日に『Nature』に掲載されています。

若マウスと老マウスの体を縫い合わせて老化と若返りを検証

若マウスと老マウスの体を縫い合わせて老化と若返りを検証しました
若マウスと老マウスの体を縫い合わせて老化と若返りを検証しました / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
若マウスと老マウスを縫い合わせそのまま5週間生活させます
若マウスと老マウスを縫い合わせそのまま5週間生活させます / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
5週間後、解剖して内臓を摘出。そして内臓に含まれる細胞の遺伝子活性を調べます
5週間後、解剖して内臓を摘出。そして内臓に含まれる細胞の遺伝子活性を調べます / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
血液には年齢に応じた時間成分が配合されており触れた細胞の時間(若さ)を変えてしまいます。なお血を飲んだり塗ったりしても効果は期待できません。輸血や血管を直結するなどの方法が必要でしょう
血液には年齢に応じた時間成分が配合されており触れた細胞の時間(若さ)を変えてしまいます。なお血を飲んだり塗ったりしても効果は期待できません。輸血や血管を直結するなどの方法が必要でしょう / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

古くから若い人間の血には、体を若返らせる力があると信じられてきました。

しかし生物の構成単位である細胞と体の設計図であるDNAの存在が明らかになると、体液に依存した若返り説は次第に下火になっていきました。

老化や若返りが起こる現場は「細胞」や「DNA」であり、間を流れる「血液」の存在は従属的(おまけ)と考えられていたからです。

しかし近年の研究により、若いマウスからの輸血によって、老マウスの認知能力や筋力、骨の修復速度など、幅広い「若返り」とも言える効果がみられることが判明します。

そこで今回、スタンフォード大学の研究者たちは、生後4カ月の若マウスと19カ月の老マウス(人間で言えば25歳と65歳)の体を縫い合わせることにしました。

縫い合わせでは表皮に加えて血管の結合も行われており、2匹のマウスは血液を共有しています。

そして研究者たちは縫い合わせた状態を5週間にわたって維持し、その後、各臓器を摘出して細胞レベル・遺伝子レベルでの変化を調べました(単一細胞RNAシークエンスを使用)。

結果、若いマウスでは老化現象の加速が、老マウスではその反対の若返りが起きていることが判明します。

(※これまでの研究によってマウスの各細胞の遺伝子活性パターンが年齢別(月齢別)に調べられデータベースに蓄積されていましたが、老マウスの血液は若いマウスの遺伝子活性パターンを老マウスのそれに近づけ、若いマウスの血液は老マウスの遺伝子活性パターンを若い状態に押し戻していたのです)

この結果は、細胞や遺伝子活性パターンの「老化」や「若返り」が、血液に含まれる成分に触れることで引き起こされていることを示します。

では具体的に細胞や遺伝子には、どんな変化が起きていたのでしょうか?

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