天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールいて座A*の画像
天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールいて座A*の画像 / Credit: EHT Collaboration,CNRS
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私たちの天の川銀河中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*」の撮影に成功! 過去の撮影とは何が違うのか? (4/4)

2022.05.31 Tuesday

2022.05.13 Friday

前ページ今回の写真はどうやって撮影されたのか?

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一体そこには何が写っているのか?

いて座A*(左)とM87(右)の画像比較。上が近傍の姿、下が遠方から観測した画像。
いて座A*(左)とM87(右)の画像比較。上が近傍の姿、下が遠方から観測した画像。 / Credit:EHT Collaboration, EAVN Collaboration

これは、今回撮影された「いて座A*」と、2019年に撮影された「M87*」の近傍と遠方からの撮影画像の比較です。

「いて座A*」の方がリングの端にぼやけたポイントが多いように見えますが、これはさきほど説明した通り、「いて座A*」の方が変化が目まぐるしくノイズとなる要素が多いためです。

電波観測により、鮮明な画像を得ることが難しいことはここからも伺えます。

遠方からの画像と比較すると、「M87*」ではブラックホールジェットと呼ばれるガスの噴出が起きていることがわかりますが、「いて座A*」ではジェットは確認されていません。

(右側の画像の下にある、右方向へ流れるガスがジェット)

ジェットは未だに天文学においては未解明の問題の1つで、それがどのような現象であるかは未だにはっきりとしていません。

ブラックホールの自転エネルギーを用いて噴出されるという説が有力ですが、今回の観測はそれらの理論について検証するヒントになるかもしれません。

また、2つのブラックホールはサイズも地球からの距離もまるで異なりますが、画像の縮尺を合わせてもほぼ同じように写っているのがわかります。

これは「M87*」は「いて座A*」より質量が3桁大きいのに対して、地球との距離は「いて座A*」より3桁遠いことによって、それぞれのサイズ感の差が相殺されているためです。

このため2つのブラックホールはほぼ同じリングの画像として見えるのです。

それにしても、ぼんやりしたこの画像では、実際なにが写っているのかあまりうまくイメージできません。

NASAは「M87*」の画像に写っているものについては、その意味を説明するためのシミレーションを公開しています。そちらを見てみましょう。

ブラックホール「M87*」を高解像化した場合の、シミュレーション映像
ブラックホール「M87*」を高解像化した場合の、シミュレーション映像 / Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman

なんだか不思議な姿に見えますが、ブラックホールの画像では片側が明るく反対のリングは暗く見えます。

この理由はブラックホールが光速に近い速度で回転しているためで、手前に向かって回転している部分はドップラー効果によって輝きが強化されて見え、遠ざかるように回転している部分は逆に光の勢いが減衰されるためです。

またブラックホールの円盤は、なぜか上下に流れる部分も見えていますが、これはブラックホールの後ろに回り込んだ光が、強力な重力によって進路を歪められたことによるものです。

後ろの光が前からも見えてしまうわけですね。

40年前の手書きブラックホール予想図が、NASA最新のシミュレーション映像と見事に一致

「M87*」と「いて座A*」の見え方はほぼ同じ為、どちらでもこのような現象が起きていると考えられます。

いて座A*のブラックホールシャドウの理論モデル画像。(左)輻射輸送計算から得られたスナップショット画像。(中央)EHTの観測時間で平均化した画像。(右)平均化した画像をEHTの解像度で畳み込んだ画像。
いて座A*のブラックホールシャドウの理論モデル画像。(左)輻射輸送計算から得られたスナップショット画像。(中央)EHTの観測時間で平均化した画像。(右)平均化した画像をEHTの解像度で畳み込んだ画像。 / Credit:EHT Collaboration

こちらは「いて座A*」の理論モデルの画像です。

ほぼ同じようにブラックホールが撮影できたのは、これらが理論モデルと非常に近いものであることの証でしょう。

この観測事実から、ブラックホールの謎はより多く解明されていくかもしれません。

とうとう人類は自分たちの属する銀河の中心さえも目視で確認できるようになりました。

ただ、残念ながら現在撮影可能なブラックホールの候補はこの2天体だけなのだといいます。

次にブラックホールが撮影されるのは、技術的に10年以上先になるのではないかと研究者は予測しています。

しかし、着実に進化している観測技術と研究者たちの努力は、今後も宇宙に関する大きな驚きを私たちに届けてくれるでしょう。

【編集注 2022.05.16 15:15】
記事内の誤字を修正して再送しております。
【編集注 2022.05.31 12:00】
記事内の誤字を修正して再送しております。

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