ロボット骨格の中で刺激を与えながらヒト細胞を成長させる
これまでの研究により、細胞に機械的刺激を与えることで、異なった成長が促されると分かっています。
過去には、蝶番(ちょうつがい)のような型の中で、一方向の刺激を与えつつ細胞を成長させたこともあったようです。
しかしこの方法で成長した組織の柔軟性は、動かしていた一方向に対してしか発揮されませんでした。
![人間の肩を模倣したロボット骨格を作成。内部でヒト細胞を培養。](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/06/b67a4fefad487258574997066dfb3da9-900x372.jpg)
そこで研究チームは、多方向の機械的刺激を与えつつ細胞を成長させることにしました。
より本物に近い「動的な環境」で細胞を成長させることで、本来の腱がもつ柔軟性を再現しようとしたのです。
そのためにチームは、人間の肩とその動きを模倣したロボット骨格を作成。
![内部のヒト細胞に3次元の機械的刺激を与えつつ成長させる](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/06/6ib6rc-1-1.gif)
その中にヒト細胞を入れて、ロボットのリアルな動きによる機械的刺激を与えながら成長させました。
2週間培養した結果、研究チームは、新しい細胞が従来の方法とは異なった成長を遂げていることに気が付きました。
静的な環境で培養した細胞よりも増殖が早く、異なる遺伝子発現が見られたのです。
![ロボット骨格の中で2週間培養したヒト細胞](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/06/9e443fd791f180828baaf69f7a2c8283-900x583.jpg)
しかし現段階では、新しく培養された細胞が、腱として役立つかはまだ分かっていません。
アイデアは画期的ですが、実際に価値のある研究なのかどうかを明らかにするには、もっと多くの調査と実験が必要でしょう。
とはいえ、スポーツや加齢による肩やひざの痛みを「人工培養腱の移植で治療できるかもしれない」と考えると、今後の進展に期待したいものです。