海の世界にも「生物による受粉」が存在した!
海の世界にも「生物による受粉」が存在した! / Credit: WILFRIED THOMAS/STATION BIOLOGIQUE DE ROSCOFF/CNRS, SU(Science News, 2022)
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Like bees of the sea, crustaceans ‘pollinate’ seaweed https://www.sciencenews.org/article/crustaceans-pollinate-seaweed-fertilization-algae Crustaceans help to fertilize seaweeds, study finds https://phys.org/news/2022-07-crustaceans-fertilize-seaweeds.html
Pollinators of the sea: A discovery of animal-mediated fertilization in seaweed https://www.science.org/doi/10.1126/science.abo6661

2022.08.04 Thursday

海の世界にも「受粉を手伝うミツバチ」のような存在がいた!

昆虫が陸上植物の受粉を媒介することはよく知られていますが、”海の世界”も例外ではないようです。

仏ソルボンヌ大学(Sorbonne University)、フランス国立科学研究センター(CNRS)はこのほど、小さな甲殻類が、紅藻(こうそう)の性細胞を運搬することで、雌雄間の受精を手伝っていることを明らかにしました。

この発見は、海の生物が媒介する藻類の”受粉”の最初の例です。

さらに、この紅藻と甲殻類は、陸上植物よりはるかに古い存在であるため、媒介者を用いた”受粉”のあり方は、海で最初に進化した可能性があります。

研究の詳細は、2022年7月29日付けで科学雑誌『Science』に掲載されました。

 

紅藻は「小さな友だち」に受粉を助けてもらっていた

受粉とは一般に、雄しべの性細胞である花粉が雌しべに付着することをいい、通常はミツバチやチョウによって媒介されます。

一方で、これと同じことは、海の世界には存在しないと考えられてきました。

しかし、ソルボンヌ大の遺伝学者であるミリアム・ヴァレロ(Myriam Valero)氏は、「グラシラリア・グラシリス(Gracilaria gracilis)」という紅藻の一種を調べていた際に、妙なことに気づきました。

海中からサンプルを採取して水槽に移したあと、藻の中から「イドテア(Idotea)」という小さな甲殻類が数百匹も飛び出してきたのです。

G. グラシリスの受精はこれまで、オス藻の表面に点在する生殖器官から生殖細胞(配偶子)が作られ、それが水流に乗ってメス藻にまで飛散する、と考えられています。

しかし、ヴァレロ氏と研究チームは「水流の他に、イドテアが紅藻の受精を手助けしているのではないか」と予想し、実験を開始しました。

イドテア・バルティカ((Idotea balthica)
イドテア・バルティカ((Idotea balthica) / Credit: WILFRIED THOMAS/STATION BIOLOGIQUE DE ROSCOFF/CNRS, SU(Science News, 2022)

実験では、水の動きがない静かな水槽に、オスとメスのG. グラシリスを15センチほど離して配置。

これと同じ水槽をもう1つ用意し、こちらには体長数センチの「イドテア・バルティカ(Idotea balthica)」を数匹入れました。

もしG. グラシリスが受精に成功すれば、メス藻の表面にシストカープ(cystocarp)と呼ばれる気泡状の構造物ができます。

研究チームは、このシストカープを数えることで、どれだけの精子がメス藻に到達し、受精したかを定量化しました。

その結果、イドテアがいる水槽では、いない水槽に比べて、受精の成功率が約20倍も高いことが判明したのです。

こちらは、イドテアがオス藻からメス藻へと飛び移る様子です。

これと別にチームは、メス藻だけを設置した水槽を用意し、事前にオス藻に触れさせておいたイドテアをその中に放ちました。

するとメス藻は、側にオス藻がいないにもかかわらず、シストカープを作り、受精に成功したのです。

そこで、オス藻に触れさせたイドテアを高倍率の顕微鏡で見てみると、まるで花粉をまぶしたミツバチのように、体中に精子が付着していることがわかりました。

このことから、イドテアが紅藻の受精に明確に寄与していることが証明されています。

イドテアの体に付着した紅藻の精子(青い粒々)
イドテアの体に付着した紅藻の精子(青い粒々) / Credit: WILFRIED THOMAS/STATION BIOLOGIQUE DE ROSCOFF/CNRS, SU(Science News, 2022)

では、イドテアは紅藻の受精を無償で手伝っているのでしょうか?

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