古代ローマの建造物「パンテオン」の内部
古代ローマの建造物「パンテオン」の内部 / Credit: canva
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古代ローマのコンクリートにはひび割れを「自己修復」する機能があったと判明!

2023.01.09 Monday

古代ローマ人は”工学の達人”であり、神殿や闘技場、水道橋など、技術の粋を凝らした様々な建造物を生み出しました。

驚くべきはその耐久性であり、2000年以上が経った今日でも元の姿を留めています。

この耐久性の鍵を握っているのがローマン・コンクリートです。

ローマン・コンクリートは古代ローマ時代に重宝された建築材料で、建築物に驚異的な強度や頑丈性をもたらしました。

現代のコンクリートの寿命が50〜100年程度であることを考えると、その凄さが分かるでしょう。

そこで米マサチューセッツ工科大学(MIT)は今回、ローマン・コンクリートの超耐久性の秘密を探るべく、調査を開始。

その結果、これらのコンクリートには「自己修復機能」を生み出す製造手法が用いられていたことが判明しました。

研究の詳細は、2023年1月6日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。

We Finally Know How Ancient Roman Concrete Was So Durable https://www.sciencealert.com/we-finally-know-how-ancient-roman-concrete-was-so-durable Riddle solved: Why was Roman concrete so durable? https://techxplore.com/news/2023-01-riddle-roman-concrete-durable.html
Hot mixing: Mechanistic insights into the durability of ancient Roman concrete https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.add1602

帝国全土に流通した「ローマン・コンクリート」とは?

コンクリートは通常、セメント(鉱物由来の粉)に水や砂、砂利を混ぜて作られます。

(ここに様々な性能をコンクリートに与えてくれる混和剤を入れることもある)

一方でローマン・コンクリートは、水・石灰・割石(石をランダムに割ったもの)に加えて、「ポッツォラーナ (Pozzolana)」という火山灰を混ぜるのが特徴です。

ポッツォラーナとは、イタリア南部のナポリ湾に面した港湾都市・ポッツオーリ(Pozzuoli)で産出された火山灰のことで、混和剤として使われました。

ポッツォラーナは天然のシリカ(ケイ素とも呼ばれるミネラルの一種)を含んでおり、水を加えると水和反応を起こして、コンクリートに高い強度を与えてくれます。

仏にあるポン・デュ・ガール。ローマ時代の水道橋でコンクリートが使われている
仏にあるポン・デュ・ガール。ローマ時代の水道橋でコンクリートが使われている / Credit: ja.wikipedia

歴史的な記録によると、ポッツォラーナはローマ帝国の全土に輸送され、コンクリートの主成分として使われていました。

ローマ人は、ポッツォラーナを混ぜることで頑丈なコンクリートが得られることをよく理解していたのです。

ローマン・コンクリートを使用した建造物として最も有名なのは、ローマ市内にあるパンテオンでしょう。

現在見られるパンテオンは紀元118〜128年に建造されましたが、今日でもほぼ原型を留めており、”世界最大の鉄筋なしコンクリート・ドーム”として記録されています。

パンテオン内部の天井
パンテオン内部の天井 / Credit: ja.wikipedia

この他にも、ローマ水道橋やコロッセオ(円形闘技場)、大浴場、城壁など、あらゆる所でローマン・コンクリートが使用されています。

専門家らは長年、「ポッツォラーナこそがコンクリートの頑丈さを生み出している」と考えてきましたが、この度のMITの最新研究により、要因はそれだけでないことが判明したのです。

その決定的な秘密はポッツォラーナではなく、石灰の部分にありました。

研究チームは石灰に何を発見したのでしょうか?

次ページ石灰の塊が「自己修復機能」を生み出していた!

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