手術せずに胃バイパスと同じ減量効果が得られる治療薬が誕生!
手術せずに胃バイパスと同じ減量効果が得られる治療薬が誕生! / Credit: canva
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手術せずに胃バイパスと同じ減量効果が得られる治療薬が誕生!

2023.04.01 Saturday

病的な肥満症の解決に胃バイパスという外科手術がありますが、そんな手術をせずに同等の減量効果が得られるとしたらどうでしょう?

そんな画期的な治療薬がまさに完成間近なようです。

米シラキュース大学(Syracuse University)のロバート・ドイル(Robert Doyle)氏とシアトル小児病院研究所(SCRI)のクリスチャン・ロス(Christian Roth)氏はこのほど、投与するだけで肥満ラットの食事量を最大80%も減少させられる新たな化合物の開発に成功したと発表しました。

約2週間で体重は平均12%減り、血糖値も大幅に低下したといいます。

さらに肥満症や糖尿病に使用される既存薬とは違い、嘔吐や吐き気といった副作用もありません。

一体どんな仕組みをしているのでしょうか?

研究の詳細は、2023年3月26〜30日にかけて開催された「アメリカ化学会(ACS 2023)」で発表されました。

Obesity treatment could offer dramatic weight loss without surgery or nausea https://www.acs.org/pressroom/newsreleases/2023/march/obesity-treatment-could-offer-dramatic-weight-loss-without-surgery-or-nausea.html

薬の投与だけでどうやって体重が減るのか?

病的な肥満症を対象とする「胃バイパス」は、持続的な体重減少や糖尿病の寛解をもたらす外科手術です。

具体的には、胃を上部の小さな袋と下部の大きな袋に分け、さらに小腸のルートを変える(バイパス)ことで消化吸収を阻害します。

一方で、胃バイパスは術後の合併症などリスクを伴い、誰もが気楽に受けられる手術ではありません。

肥満症や糖尿病はすでに世界中の何億もの人々が患っており、安全かつ利用しやすい代替案が必要とされていました。

そこで考案されたのが、投与するだけで胃バイパスと同じ持続的な効果が得られる治療薬の開発です。

この治療薬は、胃バイパスの術後に生じる「腸内のホルモン分泌量の変化」を再現することを目的としています。

そのホルモンとは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ペプチドYY(PYY)であり、これらは脳に満腹を知らせて食欲を抑え、血糖値を正常化させる働きがあります。

腸内ホルモンの分泌量の変化で食事量を減らす
腸内ホルモンの分泌量の変化で食事量を減らす / Credit: ACS – Obesity treatment could offer dramatic weight loss without surgery or nausea(youtube, 2023)

この仕組みに再現し、すでにアメリカ食品医薬品局(FDA)から肥満治療薬として承認されているのが「リラグルチド(liraglutide)」です。

リラグルチドは、脳と膵臓にあるGLP-1の細胞受容体を活性化し、減量や糖尿病の治療で大きな成功を収めています。

しかしリラグルチドには、低血糖や胃腸障害、味覚・角膜障害といった深刻な副作用が多く、ドイル氏いわく「リラグルチドを使い始めた人の8〜9割は1年以内に使わなくなる」という。

そこでドイル氏とロス氏はこの欠点を克服すべく、1種類以上の腸内ホルモン受容体に働きかける別の治療薬を開発しました。

つまり、リラグルチドのようにGLP-1受容体のみを対象とするのではなく、GLP-1受容体と2つのPYY受容体を活性化する化合物を作製したのです。

この新たな化合物は「GEP44」と命名されました。

では、GEP44にはどれほどの効果があるのでしょうか?

次ページ「GEP44」が発揮した驚きの効果とは

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