動物園の母ザルが「わが子の亡骸」を食べてしまう!一体なぜ?
動物園の母ザルが「わが子の亡骸」を食べてしまう!一体なぜ? / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)
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動物園の母ザルが「わが子の亡骸」を食べてしまう!

2023.07.05 Wednesday

サルの母親は私たちと同じように、子供に対して深い愛情を抱きます。

その証拠に母ザルたちは死んだわが子を手放すことなく、何日も持ち歩くことがよくあるのです。

そしてこのほど、伊ピサ大学(University of Pisa)の霊長類研究チームはチェコの動物園で新たに、子供の亡骸を運ぶ母ザルを発見したと報告しました。

まさに母親の愛と哀しみを物語る瞬間を目撃したわけですが、その直後に予想外の事態が起こります。

なんと母ザルが子供の亡骸を食べてしまったのです。

このようなケースは過去にほぼ前例がありません。

なぜ母ザルは愛すべき子供を食べてしまったのでしょうか?

研究の詳細は、2023年6月27日付で科学雑誌『Primates』に掲載されています。

Zoo monkey eats her baby’s corpse after carrying it around for days https://www.livescience.com/animals/monkeys/zoo-monkey-eats-her-babys-corpse-after-carrying-it-around-for-days Monkey In Zoo Eats Baby’s Corpse In Rare Example Of Primate Cannibalism https://www.iflscience.com/monkey-in-zoo-eats-babys-corpse-in-rare-example-of-primate-cannibalism-69642
Record of thanatology and cannibalism in drills (Mandrillus leucophaeus) https://link.springer.com/article/10.1007/s10329-023-01075-8

2日間持ち歩いた後、わが子を食べ始めてしまう

事が起こったのは2020年8月、チェコにあるドヴール・クラーロヴェー・サファリパーク(Dvůr Králové safari park)でのことでした。

マンドリル属の一種であるドリルのメス「クマシ(Kumasi)」が同月24日、動物園内でオスの子を出産しました。

飼育員も子供は元気に生まれたと思っていましたが、その8日後に突如として死んでしまいます。

死因の特定のために飼育員たちが亡骸を運び出そうとしましたが、母親のクマシは子供を渡そうとせず、囲いの中を逃げまわりました。

それから2日間にわたり、クマシはわが子を片時も離さずに持ち歩くようになります。

死んだわが子を撫でるクマシ
死んだわが子を撫でるクマシ / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

飼育員は「おそらく子供が死んだことを受け入れられなかったのでしょう」と指摘します。

それを示すように、クマシは子供の顔を自らに引き寄せて食い入るように目線を送り続けました。

クマシの行動を研究したピサ大学の霊長類学者エリザベッタ・パラギ(Elisabetta Palagi)氏によると「サルの母親はよく、目の動きを感知するために死んだ子供の顔をのぞき込む」といいます。

というのも、子供から何らかのフィードバックがあれば生きていることが分かるからです。

またクマシは子供の体をつねったり毛繕いをして、反応が返ってこないか確かめていました。

他の仲間が近寄ってきても子供を手放すことは決してなかったようです。

子供の亡骸を持っているのがクマシ
子供の亡骸を持っているのがクマシ / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

ところが2日目が終わる頃に異変が起きました。

クマシは子供から何の反応も返ってこないことに落ち着きを失くし、わが子を乱暴に引きずったり、木の上から投げ落とすようになります。

子供の亡骸を投げ落としたり引きずる様子
子供の亡骸を投げ落としたり引きずる様子 / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

そして子供が死んだことを認めたのか、クマシはわが子の亡骸を食べ始めたのです。

結局、飼育員が亡骸を運び出すまでに全身のほとんどを口にしたといいます。

他の仲間はそれを見守るだけで、子供を食べることはありませんでした。

これまでに母ザルが子供の亡骸を食べた事例が何回記録されたかは不明ですが、極めて稀なことに違いありません。

パラギ氏も「科学的な文献では逸話レベルの報告しか見たことがなく、今回の共食いケースはこれまでで最も詳細に報告された記録になりました」と話します。

では、なぜクマシはわが子を食べてしまったのでしょうか?

※ 次ページでは、実際の共食い映像を掲載しています。閲覧には注意してください。

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