「自分だけ給料が上がらない」他人の報酬を気にする脳の神経回路を発見!
「自分だけ給料が上がらない」他人の報酬を気にする脳の神経回路を発見! / Credit: canva
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「自分だけ給料が上がらない」他人の報酬を気にする脳の神経回路を発見!

2023.07.28 Friday

「自分の給料は変わってないのに、まわりの同僚たちは昇給していた」

この残酷な事実に気がつくと、仕事への意欲やモチベーションが大きく削がれます。

こうした「他者の報酬」が気になる現象は私たちに共通して見られますが、一方で、その情報が脳のどこで処理されるのかは不明でした。

しかし日本・生理学研究所(NIPS)は今回、同じ現象が見られるサルを対象とした研究で、ついに「他者の報酬」情報を伝える神経回路の発見に成功しました。

実験でその回路を遮断したところ、サルは「他者の報酬」をまったく気にしなくなったとのことです。

研究の詳細は、2023年7月20日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

他者の報酬を気にしなくなるサル~他者の報酬情報を伝える神経回路が明らかに~ https://www.nips.ac.jp/release/2023/07/post_513.html
Chemogenetic dissection of a prefrontal-hypothalamic circuit for socially subjective reward valuation in macaques https://www.nature.com/articles/s41467-023-40143-x

「他者の報酬」は脳内のどこで処理されるのか?

人間であれば誰でも、他人の得るものがどうしても気になるものです。

例えば、仕事内容は同じなのに、自分より同僚の給料が多いと分かれば、嫉妬したり上司に不信感を抱いたりして、仕事の意欲や生産性が落ちてしまうでしょう。

確かに給料や貯金額には、その価値を決める絶対的な基準がないので、自分の稼ぎや蓄えが良いかどうかは、他人や世間一般との比較によって決まることが多いです。

このように他者との比較で決まる報酬の価値を「相対的価値」と呼びます。

では「他者の報酬」に関する情報は内のどこで処理されているのでしょうか?

同僚だけ給料がいいとモチベが下がる
同僚だけ給料がいいとモチベが下がる / Credit: canva

サルも「他者の報酬」が気になる

これまでの研究により、次の3つのことが明らかになっています。

① サルもヒトと同じように「他者の報酬」を気にする

② 大脳皮質の「内側前頭前野(※)」に自己または他者の報酬の情報を処理する神経細胞がある

(※ 前頭葉の最前部に位置する脳領域で、左右の脳が接する内側部分。社会的な認知機能を担う領域のひとつ)

③ 脳幹に近い「視床下部外側野(※)」に報酬の相対的価値を処理する神経細胞がある

(※ 摂食に加えて睡眠や覚醒など、さまざまな生理機能の調節に関係する領域)

以上を踏まえると「内側前頭前野から視床下部外側野にいたる神経回路は、報酬の相対的価値の計算に深く関わっており、この回路を阻害すれば、サルは他者の報酬を気にしなくなるのではないか」との仮説が立てられます。

しかし、この神経回路が実際に「相対的価値」の認識に影響を与えて、サルの行動を変化させるかどうかは不明でした。

そこでチームは、実際に神経回路の活動を遮断することで、サルの行動に変化が見られるかどうかを検証しました。

次ページ神経回路の遮断で「他者の報酬」が気にならなくなった!

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