記憶力の向上と低下の両側面に呼吸パターンが関与することが判明
記憶力の向上と低下の両側面に呼吸パターンが関与することが判明 / Credit: Unsplush
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覚えるとき息を止めると記憶力が低下する!

2023.09.03 Sunday

呼吸パターンは情報の記憶時に重要な役割を果たしているようです。

今回、兵庫医科大学の中村望助教らの研究チームは、マウスの呼吸を実験的に操作し、呼吸パターンと記憶力、海馬の神経細胞の活動の関係性を検討しました。

実験の結果、記憶時に無呼吸状態になったマウスは記憶力が低下し、呼吸の頻度を減少させたマウスは誤った記憶が形成されました。

また、呼吸の頻度を変えずに周期性をランダムにした場合には、記憶力が向上する現象も確認されています。

研究チームは「本研究の結果は、呼吸が記憶にとって重要な役割を持つ可能性を示している」と述べています。

研究の詳細は、2023年7月27日付の科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

呼吸パターンが記憶力の強化と悪化の両側面を引き起こすことを発見 https://www.hyo-med.ac.jp/corporation/publicity/news-releases/2043/
Hippocampal ensemble dynamics and memory performance are modulated by respiration during encoding https://www.nature.com/articles/s41467-023-40139-7 Respiration-timing-dependent changes in activation of neural substrates during cognitive processes https://academic.oup.com/cercorcomms/article/3/4/tgac038/6696699?login=true

息を吸う瞬間は集中力・注意力に関与する脳活動が低下し、記憶パフォーマンスが悪くなる

呼吸は生命維持に欠かせない活動です。

私たちは日常的には意識せずとも呼吸していますが、深呼吸など意識的に呼吸をコントロールすることもできます。

睡眠時などの無意識の呼吸が脳活動に与える影響に関しては多くの研究が行われてきました。しかし認知課題遂行中などの覚醒下での意識した呼吸リズムやパターンが脳活動をどう変えるかは研究が不足しています。

これまで中村氏らは課題遂行中の意識的な呼吸と脳の状態の関係性を検討してきました。

それらの研究では、記憶課題に取り組んでいるときに、息を吸うタイミング(EI)が重なると、集中力・注意力を司る脳領域の活動が低下し、記憶した情報の阻害を引き起こすことを報告しています。

息を吸うタイミングが重なると集中力・注意力を司る脳領域の活動が低下する
息を吸うタイミングが重なると集中力・注意力を司る脳領域の活動が低下する / Credit: Nakamura et al. (2022)

この結果を受け、息を吸う瞬間が脳の情報処理をリセットさせ、記憶などの処理を阻害する可能性があると考えられていました。

しかしこれまでの実験では、呼吸のパターンを実験的に操作できず、呼吸パターンと脳活動の因果関係を推定することが困難でした。

そこで今回中村氏ら研究チームは、マウスの神経を機械的に操作して、呼吸パターンと記憶形成の関係を調査することにしました。

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