「小さな背番号をつけるとスリムに見える」が科学的に実証される!
「小さな背番号をつけるとスリムに見える」が科学的に実証される! / Credit: Ladan Shams et al., PLOS ONE(2023)
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「背番号が小さい選手はスリムに見える」数字が人の印象を変えることを科学的に実証

2023.10.05 Thursday

「数字の小さな番号を付けるとスリムに見える」ことが科学的に証明されたようです。

2019年にアメリカのスポーツ専門チャンネル・ESPNが、アメフトにおける空中戦の花形ポジションである「ワイドレシーバー(WR)」の選手の多くが10〜19番の背番号を好んでよく付けていることを報じ、話題となりました(ESPN, 2019)。

これについて選手たちは「単純に数字の小さい方が体がスリムでスピードがありそうに見える」と答えていたといいます。

しかし、この心理作用に関する科学的根拠は何もありませんでした。

そんな中、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の新たな研究により、体格が同じでも、数字の小さな背番号を付けるとスリムに、数字の大きな背番号を付けると大柄に見えやすくなることが証明されたのです。

研究の詳細は、2023年9月7日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。

 

Does this number make me look fat? https://newsroom.ucla.edu/releases/football-uniform-numbers-perception Footballers wearing jerseys with small numbers are rated as more slender than those wearing big numbers https://www.zmescience.com/science/news-science/footballers-wearing-jerseys-with-small-numbers-are-rated-as-more-slender-than-those-wearing-big-numbers/
Big number, big body: Jersey numbers alter body size perception https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0287474

ワイドレシーバーってどんなポジション?背番号のルールとは

名作漫画『アイシールド21』の愛読者なら、アメリカンフットボールのルールやポジションについてある程度理解されているでしょうが、それ以外の方にはあまり馴染みのないスポーツかもしれません。

特に本研究の主役であるワイドレシーバーというポジションも「何じゃそりゃ?」という人は多いはずです。

アメフトは基本的にオフェンス専門の11人とディフェンス専門の11人が攻守ごとに入れ替わるシステムであり、ワイドレシーバー(WR)はオフェンス陣における空中戦の花形ポジションです。

またフィールドを駆け抜けてロングパスをキャッチする俊足が必要なため、チーム1のスピードスターでもあります。

「ワイドレシーバー」はチーム1のスピードスター
「ワイドレシーバー」はチーム1のスピードスター / Credit: canva

それからポジションによって使用できる背番号に制限があり、アメフトの最高峰NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)では、ワイドレシーバーは1〜49番と80〜89番の間のどれかを付けることができます。

(実は以前までWRは80〜89番のみでしたが、2004年に1〜49番もOKになりました)

そして2019年のESPN調べで、NFLのワイドレシーバーの80%近くが10〜19番を背番号に選んでいたことが判明し、選手たちは理由として「スリムでスピーディーに見えるから」と答えていたわけです。

本当に小さな背番号は見た目をスリムに見せていた!

今回、UCLAの心理学者で研究主任のラダン・シャムズ(Ladan Shams)氏は、その選手たちの心理が科学的に正しいかどうかを2つの実験で検証しました。

1つ目の実験では、37人のボランティアを対象に、人種・体格・ユニフォームの色・背番号がさまざまに異なるアメフト選手のCG画像を提示します。

1人の同じ選手につき、背番号が10〜19番(数字が小さい)80〜89番(数字が大きい)の2通りの画像を作りますが、被験者にはランダムな順番で提示し、各選手の体格について評価してもらいました。

(a)同じ選手につき数字の大小で2通り作る、(b)実験ではランダムに提示
(a)同じ選手につき数字の大小で2通り作る、(b)実験ではランダムに提示 / Credit: Ladan Shams et al., PLOS ONE(2023)

その結果、人種・体格・ユニフォームの色の違いに関係なく、同じ選手は数字の小さい背番号(10〜19番)のときに体格がよりスリムで、数字の大きい背番号(80〜89番)のときにより大柄に見えると評価されたのです。

2つ目の実験では、ボランティアの数を147人に増やして、同様の実験をしました。

ただし今回は「数字の8や9が1よりも占有面積が広いために、体まで大きく見せているのではないか」という疑問に答えています。

具体的には、同じ選手につき17と71・18と81・19と91のように、同じ数字を使いながら順序を反転させた2通りの画像を用意しました。

これでユニフォームにおける数字の占有面積を同じにしながら、純粋に数の大小によって心理効果が生じているかを検証できます。

占有面積を同じにするため「17と71」のように数を反転させたものを使用
占有面積を同じにするため「17と71」のように数を反転させたものを使用 / Credit: Ladan Shams et al., PLOS ONE(2023)

その結果、占有面積に関係なく、背番号が小さいとき(17〜19)の方が大きいとき(71〜91)よりも選手の体が細身に見えると評価されたのです。

これにより、被験者による体のサイズ知覚は純粋に数字の大小の影響を受けていることが示されました。

この結果についてチームは、これまでの人生で経験されてきた数字と物の大きさの関係性が、体のサイズ知覚にも適用されている可能性があると述べています。

例えば、スーパーの商品袋に記載されたグラム数にせよ、ジムのダンベルに刻まれたキロ数にせよ、私たちは生活の中で「数字が大きいほどサイズや重さが大きくなる」ことを認識し、一つの規則性として自然と記憶しています。

そのルールを無意識のうちにアメフト選手の体格にも当てはめているのかもしれません。

数字の小さい左の方がスリムに見えますか?
数字の小さい左の方がスリムに見えますか? / Credit: Ladan Shams et al., PLOS ONE(2023)

となると、この心理作用は私たちの日常生活でも起こりうるのではないでしょうか?

例えば、小さな数字の印字された服を着るとスリムに見え、大きな数字の入った服を着るとガタイがよく見えたりするのかもしれません。

あるいは名前で考えますと、一郎さんより五郎さんの方が何となく体格が良さそうな感じがしませんか。

その辺りもぜひ研究で実験してもらいたいところです。

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