画像
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
psychology

「文法のおかしな言葉」は認識した人の自律神経を狂わせると判明!

2023.11.02 Thursday

かまいたちの漫才で、ボケの山内さんが「もし俺が謝ってこられてきてたとしたら、絶対に認められてたと思うか」とおかしな言葉遣いをし、ツッコミの濱家さんが発狂するというネタがありました。(動画はこちら

あれは決して大げさではなく、科学的に真実だったのかもしれません。

英バーミンガム大学(University of Birmingham)はこのほど、文法のおかしな言葉を聞くと、人は生理的なストレスを起こすことを発見しました。

そのストレスは自律神経を刺激して、心拍のリズムを変動させる形として表れたとのことです。

研究の詳細は、2023年10月12日付で科学雑誌『Journal of Neurolinguistics』に掲載されています。

Hearing ‘bad grammar’ results in physical signs of stress – new study reveals https://www.birmingham.ac.uk/news/2023/hearing-bad-grammar-results-in-physical-signs-of-stress-new-study-reveals Bad grammar cause real physical stress, study finds https://newatlas.com/science/bad-grammar-physical-stress/
Physiological responses and cognitive behaviours: Measures of heart rate variability index language knowledge https://research.birmingham.ac.uk/en/publications/physiological-responses-and-cognitive-behaviours-measures-of-hear

生理的ストレスの指標として「心拍リズム」を計測

丁寧語を意識しすぎて語尾がヘンになったり、うまく意味の汲み取れない言葉を話してしまうことは、日本語のネイティブであってもよくあることです。

私たちがそうしたそうした言葉に出くわすと、何か小石に蹴つまずいたのように「んっ?」と意識にストッパーがかかる感じがしますよね。

ただこれまでのところ、文法のおかしさを認識することが、私たちの肉体に対して実際に生理的反応を引き起こすかどうかについては特に確認されていませんでした。

そこでバーミンガム大の研究チームは、その生理的な指標として、文法のおかしな言葉を聞いた人の「心拍変動(Heart Rate Variability:HRV)」を測定する実験を行いました。

心拍変動(HRV)とは、心臓の1拍ごとの拍動間隔に見られる「ゆらぎ」のことです。

心拍変動のイメージ図(1拍ごとの間隔に変動があると正常な証)
心拍変動のイメージ図(1拍ごとの間隔に変動があると正常な証) / Credit: en.wikipedia

私たちの心臓は常に一定のリズムを保っているわけではなく、1拍ごとの間隔がミリ秒単位で毎回変化しています。

感覚的には一定のリズムを刻む心拍の方が健康そうに思えますが、実は逆で、心拍が不規則に変動する方が正常かつ健康な証なのです。

心拍のリズムというのは「交感神経」「副交感神経」という2種の自律神経の相互作用によって決まります。

交感神経は心拍数を増加させたり、血圧を上昇させる”アクセル”の働きを、副交感神経は心拍数を減少させたり、血圧を低下させる”ブレーキ”の働きをしています。

例えば、緊張すると交感神経が刺激されて心臓がドキドキし、リラックスすると副交感神経が刺激されて心拍も落ち着きます。

この2つの自律神経が正常に働いていると、心拍の間隔も絶えず揺らぐことになるのです。

反対に、体がストレスを感じていたり、加齢や病気により何らかの問題があると、心拍リズムは一定になることが知られています。

こうした理由からチームは「心拍変動(HRV)」を生理的なストレスマーカーとしました。

ヘンな言葉遣いは「生理的ストレス」を引き起こしていた!

さて今回の調査では、イギリス在住の健康な男女41人(18〜44歳、英語話者)を被験者とし、文法の誤りを含む音声サンプルを聴かせる実験を行いました。

音声サンプルには4人の異なる英語話者による160の会話文を用意し、その半分に文法のおかしな箇所が含まれています。

例えば、時制の間違い、単数形と複数形の混同、冠詞(the)の入れ忘れなどです。

実験中、被験者は専用の装置で「心拍変動(HRV)」を測定され、実験後はアンケート調査で音声サンプルに対する主観的な評価をしました。

ヘンな文法は私たちの自律神経系に何らかの影響を与えていた
ヘンな文法は私たちの自律神経系に何らかの影響を与えていた / Credit: canva

そして収集されたデータを分析した結果、文法のおかしな言葉を聞いたときに、被験者の「心拍変動(HRV)」が有意に減少、つまり心拍間隔のゆらぎが減ってリズムが一定に近づいていることが判明したのです。

これと同じ変化は文法の正しい言葉を聞いたときには確認されませんでした。

このことから、文法のおかしな言葉は、自律神経系に何らかの影響を及ぼすことで「生理的なストレス反応」を起こし得ると結論されました。

研究主任で認知言語学者のダグマー・ディヴジャク(Dagmar Divjak)は次のように述べています。

「従来の研究では、言語認知と自律神経系の相互作用についてはほとんど注目されてきませんでした。

しかし私たちの研究結果は、おかしな文法の認知に応じて自律神経系が反応することを示しており、言語認知がこれまで考えられていた以上に、生理的システムにストレスを含む影響を及ぼすことを明らかにするものです」

言葉遣いの間違いに対して、ネットではすぐに訂正のコメントをする人たちがいます。

こうした人たちを神経質すぎる、細かすぎると感じている人たちは多いかもしれませんが、実際文法の間違いを認識することは体に生理的ストレス反応を引き起こしているようです。

人によっては最初に紹介した漫才のように、発狂してしまうのもあながちおかしなことではないのかもしれません。

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!