なんで顔長いの?哺乳類は理由がなければ「顔を長くしたい」生き物だった
なんで顔長いの?哺乳類は理由がなければ「顔を長くしたい」生き物だった / Credit: canva
animals plants

哺乳類は理由がなければ「顔を長くしたい」生き物だった

2023.12.21 Thursday

馬に「なんで顔が長いの?」と聞くと、その正しい答えは「余裕があるからさ」となるようです。

ロバとウマ、ヒツジとウシ、ワラビーとカンガルーのように、哺乳類における同じグループの小型種と大型種を比べてみると、ほとんど決まって大型種の方が長い顔をしているのが分かります。

実はこの理由は今までよく分かっていませんでした。

しかし豪フリンダース大学(Flinders University)は最近、この謎が「摂食への適応」というシンプルな枠組みで説明できると発表。

すばり、小さい動物は筋肉量が少ないので、できるだけ噛む力を強くするために顔を短くし、逆に大きい動物はそもそも噛むための筋肉量が十分なので、顔を長くしても大丈夫なのだという。

となると哺乳類は基本的に「顔を長くしたい生き物」のようですが、顔を長くするメリットはどこにあるのでしょう?

研究の詳細は、2023年11月29日付で科学雑誌『Biological Reviews』に掲載されています。

Why the long face? Now we know https://news.flinders.edu.au/blog/2023/12/15/why-the-long-face-now-we-know/ There’s a Surprisingly Simple Explanation For Why Horses Have Long Faces https://www.sciencealert.com/theres-a-surprisingly-simple-explanation-for-why-horses-have-long-faces
Facing the facts: adaptive trade-offs along body size ranges determine mammalian craniofacial scaling https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/brv.13032

どうして大きい哺乳類ほど顔が長いの?

生物学者は以前から、哺乳類のうちに「大きい種ほど顔が長くなり、小さい種ほど顔が短くなる」傾向があることを知っていました。

これを専門用語で「頭蓋顔面進化アロメトリー(craniofacial evolutionary allometry:CREA)」と呼びます。

CREAは一般的に、同じグループ内の小型種と大型種の比較において言及されるものです。

例えば、同じウシ科のヒツジとウシ、同じネコ科のネコとトラ、同じカンガルー科のワラビーとカンガルーなどを比べると、決まって大型種の方が顔や鼻先が長くなっています。

CREAはあらゆる哺乳類に普遍的に見られる一方で、生物学者はその理由を説明できる枠組みを持っていませんでした。

ウシ科のヒツジとウシ、シカ科のプーズーとヘラジカ。決まって大型の方が顔が長い
ウシ科のヒツジとウシ、シカ科のプーズーとヘラジカ。決まって大型の方が顔が長い / Credit: sciencealert – There’s a Surprisingly Simple Explanation For Why Horses Have Long Faces(2023)

しかし今回の研究チームは、哺乳類の頭蓋骨や食性に関するデータを総合的に分析する中で、「どのように顔を使って食べるか」というシンプルな生体力学でCREAを説明できることに気づきました。

その前提にあるのは、同じグループ内の小型種と大型種が基本的に同じような物を食べているという点です。

ヒツジとウシは同じ干し草を、ワラビーとカンガルーは牧草や草木を、ネコとトラは共に肉類を食べます。

つまり、近縁の小型種と大型種は同じような物を食べるのに、異なる摂食戦略を取っているのです。

それが「顔の長さを変える」ことなわけですが、チームによるとその理由もしごく単純でした。

小型種はそもそも体が小さいために、顔まわりの筋肉量も自然と少なくなります。

すると噛む力も小さくなるので、口先の長さを短くして噛む力を高めていたのです。

反対に、大型種は体が大きいために、顔まわりの筋肉量も発達しており、わざわざ顔を短くしなくても噛む力は十分に備わっています。

それゆえ、近縁の小型種が食べるような物であれば、顔が長くても余裕をもって食べられるのです。

顔の長さによる接触適応の図解。口先を短くすれば、口先が長い種と同等の噛む力を実現できることを示す
顔の長さによる接触適応の図解。口先を短くすれば、口先が長い種と同等の噛む力を実現できることを示す / Credit: Rex Mitchell et al., Biological Reviews(2023)

チームはこれを”トングの持ち手”に例えます。

バーベキューの際にお肉をトングでつかむときは普通、持ち手の末端部分を持ちますよね。

それも十分につかめますが、どっしりと大きなステーキをひっくり返すときはトングの挟む力をより強くしなければなりません。

その場合はトングの先端に近い部分を持つことで挟む力を強くできます。

要するにトングの持ち手と挟む部分の間の長さが、哺乳類のアゴの付け根と歯の間の長さに対応するのです。

これは簡単な「てこの原理」に従っています。

となると、哺乳類は噛む力が元から十分に備わっているのであれば、顔を長くしたい生き物のようですが、そのメリットはどこにあるのでしょうか?

次ページ哺乳類が「顔を長くしたい理由」とは?

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

動物のニュースanimals plants news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!