光る植物のメカニズム
ファンタジー作品ではよく暗闇でほのかに発光する植物の姿が描かれますが、これを現実の植物で再現しようという試みは以前からありました。
ただ、それらは発光性の化学物質を植物に付着させるなどの方法によるもので、長くても数時間しか光が持続しません。
![光る植物の開発に成功](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/02/b87337f24053c8f9c820805bef675165.gif)
しかし、現実の世界にもホタルや発光キノコのように、光を放つ生き物が存在しています。
そこで2020年4月、国際的な研究チームは、こうした発光する生物の遺伝子を組み込むことで「外部の支援なしで生涯にわたって光り続ける植物」の開発に成功したのです。
当時開発に利用されたのはナス科の植物「タバコ」であり、これに発光性キノコの遺伝子を組み込むことで、「光るタバコ」が生み出されました。
発光タバコのメカニズムは次の通りです。
![光る植物のメカニズム。いわゆるルシフェリン・ルシフェラーゼ反応。ルシフェリンがルシフェラーゼの存在下で酸化されて3-ヒドロキシヒスピジンと二酸化炭素に分解される。この3-ヒドロキシヒスピジンのカルボニル基が電子的に励起された状態にあって、それが基底状態に戻る時に光が放出される。](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/02/92e0c808802fee2a3d3851fe5f3bb30e-900x452.png)
上の図のように、すべての植物が持つ「カフェイン酸(またはコーヒー酸)」を材料に、ホタルが光るのと同じ仕組み(ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応)で発光させるのです。
この反応には4つの酵素が関わってきますが、タバコに発光性キノコの遺伝子を組み込むことで、それらの酵素を生成させているのです。
特に4つ目の酵素は、「燃えカス」を「カフェイン酸」へとリサイクルするため、発光自体は生涯続くようになっています。
そして材料である「カフェイン酸」がすべての植物に含まれるという事実は、すべての植物が発光植物となりえることを示唆しています。
実際、この研究を応用したアメリカの「ライトバイオ(Light Bio)」社は、タバコ属の近縁である「ペチュニア(学名:Petunia)」を発光させることに成功しました。