ヒッグス粒子の崩壊、ついに初観測 

quantum 2018/08/30

Point
・ヒッグス粒子は質量を生み出す素粒子として理論上提唱されており、その存在が実験により示唆されていたが確定はしていなかった
・ヒッグス粒子は60%の確率でボトムクォークの対として崩壊するとされており、今回の研究でこの崩壊由来のボトムクォークが検出された
・この発見を受けて、今後ヒッグス粒子の振る舞いや他の物質との相互作用を解明する道が開かれる

発見から6年、ようやくヒッグス粒子の崩壊が確認されました。

現代素粒子物理学の基本的な枠組みとなる「標準模型」では、すべての素粒子の質量は厳密にゼロでなくてはなりません。しかし実際には質量をもつ素粒子が存在することがわかっています。この矛盾を解決する鍵が、「万物に質量与える粒子」であるヒッグス粒子なのです。

欧州合同原子核研究機構(CERN)の発表によると、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)によって、ヒッグス粒子がボトムクォークとその反粒子である反ボトムクォークへ崩壊したことが観測されたとのこと。この発見によって、ようやくヒッグス粒子の存在が確定したことになります。

Observation of H→bb decays and VH production with the ATLAS detector
https://arxiv.org/abs/1808.08238

標準模型の予測では、ヒッグス粒子は約60%の確率でクォークフレーバーの中で2番めに重いボトムクォークに崩壊するとされています。物理学者たちはこの過程を観測しようと挑戦してきました。というのもヒッグス粒子の有無によって、「標準模型」が支持されるか、あるいは新しい理論が必要となるかが決まるからです。

しかしその過程を捕えることは非常に難しいものでした。ヒッグス粒子は2つの陽子の衝突によって生み出されます。もし陽子の中の2つのグルーオンが融合し、2つのトップクォークが生み出されると、それらのトップクォークはヒッグス粒子へと再結合する可能性があります。この素粒子が存在できるのは約10の24乗分の1秒ほどで、崩壊してもっと軽い粒子になります。その素粒子を検出することで、量子物理学者はヒッグス粒子の存在を推測します。

これらの粒子は、フェルミ粒子=反フェルミ粒子の対、光子の対、ゲージ粒子の対などに崩壊しますが、これらの検出は比較的容易です。しかし、それがボトムクォークとなると、さらに工夫が必要となります。陽子同士の衝突は、素粒子のシャワーを生み出し、その中にはボトムクォークも含まれるからです。そしてそれらも、すぐに崩壊して他の粒子になります。ヒッグス粒子の存在は非常に短いこともあり、検出されたボトムクォークがヒッグス粒子の崩壊の結果によるものなのか、陽子衝突のバックグラウンドによるものなのかを決めるのは不可能とされていました。

ヒッグス粒子の崩壊を観測するため、ATLAS検出器とCMS検出器を使用し、LHCを2回走らせたデータを組み合わせ、生み出された素粒子のシャワーからボトムクォークを見つけようと試みました。そしてそのボトムクォークを追跡して、ヒッグス粒子を探しました。

しかし、ヒッグス粒子から2つのボトムクォークが生まれたように見えるイベントを、一つ見つけるだけでは不十分でした。その過程を明るみにするのには、何百何千もの解析が必要だったのです。

その中で、少量ながらヒッグス粒子の形成過程で生み出されたと思しき粒子がありました。それらの粒子を、ヒッグス粒子が生み出された可能性のあるイベントの印として用いて、他のあらゆるものから分離しました。するとその解析から、ボトムクォークへのヒッグス粒子の崩壊を発見。またそれだけでなく、その生成機構についても多くのことがわかったのです。

そして崩壊頻度の測定値が一致したことで、素粒子物理学の標準モデルが正しいことが再び確認されました。今後はヒッグス粒子の詳細な振る舞いや、他の物質と相互作用する方法、さらには、いまだに見つかっていない暗黒物質と相互作用するのかどうかについての研究も期待されます。

 

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via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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