「タイムマシンは実現可能だ」物理学者が描く数理モデルとは

science_technology 2018/09/09

イギリスの物理学者たちが、理論的な「タイムマシン」の数理モデルを思いついたようです。

2017年3月に“Classical and Quantum Gravity”で掲載された論文によると、そのタイムマシンとは、「時空を前後に動くことのできる箱」。宇宙の時空の曲面を利用して、時間を箱の中の乗客のために円形に曲げ、この輪っかによって乗客は過去や未来へと飛ぶことができるというものです。

「人々は、タイムトラベルをフィクション同様に考えています。現実に誰も行っていないので、不可能であると考えがちです」と、論文著者のブリティッシュコロンビア大学の理論物理学者で数学者のベン・ティペット氏は言います。

「しかし、数学的には可能なのです」

Traversable acausal retrograde domains in spacetime
http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/aa6549/meta

ティペット氏はメリーランド大学の天体物理学者デイビッド・ツング氏と協力し、アインシュタインの一般相対性理論を使って「横断可能非因果律逆行時空内領域(a Traversable Acausal Retrograde Domain in Space-time略してTARDIS)」という数理モデルを思いつきました。

しかし、この法則に合ったタイムトラベルへと入る前に、現実的な観点からざっと見てみましょう。彼らは、明日にでも建造可能なタイムマシンの設計図を持っているわけではありません。このタイムマシンを作るためには、材料となる「エキゾチックな物質」が必要となり、それはまだ発見されていないのです。しかし彼らは、「それはすぐ手に入るだろう」と言っています。

では最初に、ティペット氏とツング氏が提唱していることについて説明します。このモデルでは、宇宙を「4次元である時間を別に持った3次元の空間」ではなく、これらの4つの次元を同時に想像する必要があります。それによって、時空連続体という宇宙の曲がった布地に、時間と空間が異なる方向ですべて接続しているものを想像することが出来ます。

アインシュタインの相対性理論は、宇宙の重力効果を時空の曲面と結びつけるものです。この現象は、惑星や星の楕円軌道の背後のある現象であると考えられています。もし時空が平面で曲がっていなければ、惑星は直線的に動きます。しかし、相対論によると時空の形状は、高質量の物体のそばでではネジ曲がり、惑星の進路はその星の周りを周るように曲げられるのです。ティペット氏とツング氏の議論によると、宇宙で捻じ曲げられるのは物理空間だけではなく、高質量の物体のそばでは時間も曲がります。

「時空表面における時間の方向もまた曲線です。ブラックホールに近づくほど時間が遅くなるという証拠もあります。私のタイムマシンモデルでは、時空の曲面を使って時間を乗客に対して直線ではなく円形になるように曲げます。この円は、私たちを時間的に後ろへ連れて行くのです」

この理論的な特性を利用するために、物理学者たちは時空形状をある種の「泡」状に作ることを提唱しており、その中にあるものは何であれ、大きな環状の通路を通して時間と空間を移動します。もしこの泡が光のスピードを越えることができれば、時間を逆上ることもできるのです。そして2人は、泡が光のスピードを越えることも数学的には可能だと主張しています。

2017年の論文では、「時空を通した円形の通路に沿って、時間を『前進』と『後進』して旅する箱なのです。外部の観測者は、箱の中の時間旅行者が時間を逆に進むのを見て喜ぶでしょう。壊れた卵は戻り、コーヒーからクリームが分離するからです」

下の図には、その基本的な考え方が示されています。泡状のタイムマシンの中にいるのがAさんで、その外に立って観察しているのがBさんです。時間の矢は通常の環境下ではいつも前進する方向に向けられますが、黒い矢印で示されます。研究者によると、AさんとBさんは時間を劇的に異なる方法で経験します。

「泡の内側では、AさんがBさんに起こる出来事が、未来へと進んだ後に逆転するのを周期的に見ます。泡の外では、観察者であるBさんは、2つのバージョンのAさんが同じ場所にいて、一つの時間の針は時計回りに周り、一つの時間の針は逆時計回りに周るのを見るでしょう。」

言い換えると、外部の観察者はタイムマシンの内部に2つのバージョンの物体を見ると言うことです。一つのバージョンは時間を順行し、一つのバージョンは時間を逆行します。ティペット氏とツング氏は数学は堅実であると言っている一方で、現在の問題は彼らが提唱する物を作るための最適な材料が実際にはないことです。

「これは数学的には実現可能ですが、時空装置の建造はまだ不可能です。というのも、材料が必要だからです。エキゾチック物質とよんでいる不可能な方向へ時空を曲げる物質を私達はまだ発見していません」

彼らのアイディアは、他の理論的なタイムマシンであるアルクビエレ・ドライブを思い起こさせます。これもまた、エキゾチック物質の殻を使って、乗客を時空を通して運ぶものです。

どちらのアイディアも、「これらの時空を曲げる物質をいかにして生み出すか」というアイディアなしには先に進むことはできませんが、ティペット氏の指摘するように、タイムマシンの可能性についての好奇心は抑えることはできません。

「時空を研究することは、魅力的ですし困難でもあります。この分野の専門家は1949年からタイムマシンの可能性について探索してきていて、私の研究はそこに新たな方法を提供したのです」

 

「主観的な時間」に関わる脳の領域が発見される

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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