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チーズが本当はコレステロール値を「下げる」ことが判明

2021.01.27 Wednesday

2018.09.04 Tuesday

Point
・チーズを食べるとコレステロール値が効果的に低下するということが判明した
・研究チームは、チーズに含まれるタンパク質やカルシウムなどの複数の栄養素が一つの食品として一緒になった時に発揮される「チーズ・マトリックス」の働きに着目した
・チーズが含むカゼインやMGMといった成分や、熟成過程で濃縮された脂肪分が、コレステロール低下に作用している可能性もある

チーズ好きの方に朗報です。これまで「コレステロール値を上昇させる」というイメージがあったチーズですが、むしろ下げることを証明する研究が発表されました。

研究を率いたのはユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのエマ・フィーニー氏。チーズを食べるとコレステロール値が効果的に下がる可能性を示しました。「飽和脂肪酸が多いため心臓に悪い」と思われてきたチーズが持つ、意外な効果に注目が集まっています。

Dairy matrix effects: response to consumption of dairy fat differs when eaten within the cheese matrix—a randomized controlled trial
https://academic.oup.com/ajcn/advance-article-abstract/doi/10.1093/

研究では、アイルランド人の肥満体型の中年成人164名を対象とした実験が行われました。その結果、チーズを食べた参加者に体重の増加は見られず、全体のコレステロール、悪玉コレステロールともに値の低下が観察されたのです。

参加者らは4つのグループに分けられ、指定された食生活を6週間続けました。第1グループは、脂肪分の多いアイルランド産チェダーチーズ120グラム(標準的なアイルランド産チーズのブロック半分に相当するほどの量)を食べ、コップ1/3杯ほどのミルクを除き、他の乳製品は摂取しませんでした。第2グループは、低脂肪チェダーチーズとバターを食べました。第3グループは、バターに加えて、粉末プロテインとカルシウムのサプリメントを摂取しました。これはチーズの栄養価に相当するように調整した「擬似チーズ」です。そして第4グループは、チーズと「擬似チーズ」のどちらも摂取しませんでした。

その結果、なんと脂肪分の多いチーズを食べた第1グループでコレステロール値がもっとも低下したのです。低脂肪チーズとバターを食べた第2グループと、「擬似チーズ」を食べた第3グループにもコレステロール値のわずかな低下が見られましたが、第1グループにはおよびませんでした。

この実験は、チーズに含まれるタンパク質やカルシウムが、サプリメントや低脂肪のダイエット食品として「分けて」摂るのではなく、一つの食材として摂取された時に、血管を詰まらせる乳脂肪の作用をもっとも効果的に抑えることを示唆しています。ファーニー氏らは、これらの複数の栄養素が一つの食品として一緒になった時に発揮されるチーズの働きを、「チーズ・マトリックス」と呼んでいます。

チーズなどの発酵乳製品を多く摂る人ほど心臓病や二型糖尿病のリスクが低いことは、世界中で報告されています。その鍵の一つとなるのが、乳製品に含まれる完全タンパク質「カゼイン」です。カゼインは他の動物性タンパク質に比べてゆっくりと消化されます。また、チーズに含まれる脂肪分はミルクに比べて「濃縮」されているということも重要です。チーズは、凝乳から乳清を取り除き、菌を加えて乳糖を乳酸に変えるという過程を経て作られるため、水分が少ないのです。特にチェダーチーズは、塩を加えて積み上げ、回転させながら「熟成」させる工程で、菌がタンパク質を分解することで独特の噛みごたえや風味が生まれます。

さらに、「乳脂肪球皮膜 (MFGM)」の効果も指摘されています。MFGMとは、ミルクに浮かぶ個々の脂肪酸を包む薄い皮膜のこと。バターでは作る過程でMFGMが破壊されて水分と一緒に取り除かれてしまいますが、チーズには豊富に含まれているのです。

しかしこれらの見方に反対する研究者もおり、「カゼインのような単体の栄養素が持つ効果を、他と切り離して論じるのはまったく不十分だ」と指摘しています。

実は、フィーニー氏の行った実験には問題点もありました。参加者の一部が途中でリタイアしたのです。リタイアした参加者は、いずれも「チーズの摂取が一切許されなかったグループ」。日本人には想像し辛いかもしれませんが、彼らにとっては「チーズ無しで6週間も過ごすなんてやってられるか」といった心境だったようです。

というわけで、「チーズの摂取はチーズの不摂取よりも効果的にコレステロール値を下げる」と明言するには少しサンプル数が不十分のようですが、チーズ好きにとっては、これまでの定説を覆す嬉しい研究となりました。

ただし、いくらチーズが体に良いといっても取り過ぎは禁物です。フィーニー氏が実験で参加者に食べさせた120グラムという量は多すぎますが、全体の食事のバランスを考え、適量を食べるようにしましょう。

朝食を抜きがちな人には「アーモンド」がベストという研究

via: sciencealert / translated & text by まりえってぃ

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