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早生児の「神経発達の遅れ」を防ぐ特殊な音楽

2021.01.27 Wednesday

2019.06.02 Sunday

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Point

■早生児に特殊な音楽を聞かせることで、神経網の発達を強化し、神経発達の遅れを防げることが判明

■保育器での集中治療時の早生児は、ストレスフルな刺激とその意味の関連付けが困難

■各タイミングに応じた心地よい刺激を加えることで、顕著性ネットワークとその他の神経網の機能性結合を強化

音楽が救いの手となるかもしれない。

早産で生まれた赤ちゃんに特殊な音楽を聞かせることで、神経網の発達を強化し、神経発達の遅れを防げられることが明らかになった。

スイスのジュネーブ大学とジュネーブ大学病院の研究チームによる論文が、「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されている。

Music in premature infants enhances high-level cognitive brain networks
https://www.pnas.org/content/early/2019/05/21/1817536116

この研究が行われた先進国の一つであるスイスでも、赤ちゃんの1%近くが出産予定日より一ヶ月以上早く誕生する。その数、年間800名にのぼる。

新生児用の薬剤の進歩により生存率は大幅に改善しているが、早生児は誕生時点における脳が未発達なため、学習障害・注意欠陥障害・情緒障害などの神経心理学的異常を生じるリスクが高い。

Credit: depositphotos

早生児は保育器の中で集中治療を受けるが、母親の子宮の中とはまったく異なる環境なために、赤ちゃんにとってはストレスも大きい。こうした環境の中でも、か弱い赤ちゃんの脳ができるだけ健全に発達する手助けになるよう、研究チームは早生児用に開発した特別な音楽を用いた手法を提案している。

タイミングにぴったり合った音楽刺激

研究チームは、早生児の神経心理学的異常が、集中治療時の環境下ではストレスフルな刺激が多く、必要な刺激が欠けているからだと仮定し、その環境に心地よい刺激を加えることを思いついた。

聴覚が他の感覚より早く発達することから、研究チームは、作曲家アンドレアス・フォーレンヴァイダー氏に早生児向けの曲作りを依頼した。

重視したのは、赤ちゃんのその時の状態に合わせた音楽刺激を与えることだ。研究チームは、各タイミングに応じた心地よい音楽刺激を与えられるよう、目覚める時の音楽・眠りにつく時の音楽・活動中の音楽を用意することにした。

フォーレンヴァイダー氏は、赤ちゃんたちにさまざまな楽器の音色を聴かせ、その反応を確かめた。なかでも赤ちゃんがもっともよく反応したのはインドの蛇使いが吹く笛「プーンギー」。

泣きわめいていた赤ちゃんが一瞬でおとなしくなり、音楽に耳を傾けたとのこと。蛇使いは赤ちゃん使いでもあったりするようだ。

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こうしてフォーレンヴァイダー氏は、プーンギー、ハープ、ベルによる各8分間の曲を、3つ作曲した。

次ページ顕著性ネットワークと他の神経網の機能性結合が大幅改善

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