2600年間謎だった女性ミイラ「Takabuti」の死因が明らかに

history_archeology 2020/01/28
「Takabuti」のミイラ/Credit: Ulster Museum
point
  • 1834年に発見された古代エジプトの女性ミイラ「Takabuti」の死因が刺殺と判明
  • DNA検査によると、彼女は遺伝子的に、現代のエジプト人よりもヨーロッパ人に近いことが明らかに

3000年前のミイラから「生前の声」を復元することに成功

Takabuti」という名のミイラをご存知でしょうか。

エジプトの古代都市テーベ(現ルクソール)で出土した女性のミイラで、現在は、ベルファスト(北アイルランド)のアルスター国立博物館に展示されています。

Takabutiは、ナポレオン戦争後に起きたミイラの激しい取引に巻き込まれ、1834年にエジプトからアイルランドに持ち込まれました。アイルランドに渡った史上初のミイラとしても有名です。

その一方、Takabutiは、発見から190年近く経った今も多くの謎に包まれています。

しかし今回、北アイルランド国立博物館、マンチェスター大学、クイーンズ大学ベルファストなどが参加した最新の研究により、彼女の遺伝的な秘密や凄惨な死因などが明らかにされました。

研究の詳細は、1月27日付けで「The University of Manchester」に掲載されています。

「Takabuti」はエリート女性だった

これまでの研究では、古代エジプト学者のエドワード・ヒンクス氏が、棺に記されたヒエログリフを解読することで、Takabutiの出自を明らかにしています。

それによると、Takabutiは、既婚の女性であり、死亡時の年齢は20代、古代都市テーベに居を構える大邸宅の女主人であったことが分かりました。さらに彼女の実父は、古代エジプトの太陽神アムンに仕えた司祭であることも判明しています。

「Takabuti」が納められていた棺/Credit: アルスター国立博物館

また近年行われたX線検査や頭髪の分析、炭素年代測定により、Takabutiは、紀元前660年頃(古代エジプト第25代王朝の末期)に生きていたことも分かっています。

しかし、「なぜテーベ出身のエリート女性がこれほど早すぎる死を迎えたのか」については、これまで大きな謎となっていました。

「死の秘密」がついに判明!

そして今回、共同研究チームが実施したDNA分析およびCTスキャンにより、Takabutiの死の秘密が約2600年の時を経て解決されました。

分析によると、彼女の死因は鋭利な刃物による刺殺だったとのこと。CTスキャンの結果、左肩近くの上部後背に大きな刺し傷が見つかっています。

CTスキャンで見つかった刺し傷/Credit: University of Manchester and R.D.Loynes

研究員のエイリーン・マーフィー氏は「刺し傷の状態から、即死に近かったことが伺えます。彼女の遺体は、棺の中で安らかに眠っている一方、死に際は凄惨な最期を迎えたのでしょう」と話します。

Takabutiは、何者かの手によって殺害されていたのです。

エジプト人じゃない⁈

また同時に、Takabutiの身体には、奇妙な特徴が複数見つかっています。

まず、普通の人に比べて歯の本数が1本多いことが分かりました。一般的には32本が普通ですが、彼女には33本目の歯が見つかっています。これは、総人口の0.02%にしか見られない現象です。

歯が1本多い/Credit: University of Manchester and R.D.Loynes

さらに驚くべきことに、彼女は遺伝子的に現代エジプト人よりもヨーロッパ人に近いことが判明しました。

分析により発見された「H4a1」という遺伝子データは、研究チームの知る限り、古代および現代エジプト人には見られないもののようです。反対に、この特徴はヨーロッパ人に見られます。

Credit: University of Manchester and R.D.Loynes

それからCTスキャンでは、新たに彼女の心臓が特定されました。

ミイラを作るときは、腐敗の原因となる内臓はすべて取り除かれますが、心臓だけは、知性や理性が宿る場所と考えられていたので、そのまま残されます

また、古代エジプトでは、心臓は死後の世界で取り除かれ、その重さにより、良い人生を送ったかどうかを判断されると考えられていました。

もし心臓が重かったら、冥界の獣アメミットに食べられ、二度と転生することはできません。これは魂の「永遠の破滅」を意味するのです。

パピルスに描かれたアメミット(中央右)/Credit: ja.wikipedia

Takabutiは、一体何者で、どのような人生を送ってきたのでしょうか。

まだまだ謎は深まりそうです。

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reference: livesciencebelfastlive / written by くらのすけ

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