7年間も同じ場所から動かない目無しの洞穴生物「ホライモリ」

animals_plants 2020/02/04

ホライモリはウーパールーパーと同じサラマンダーの一種/Credit: wikipedia / Arne Hodalič
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  • ホライモリは洞窟の中で10年近く移動していないことがわかった
  • 動かないライフスタイルはホライモリの寿命を伸ばしていた

ホライモリはウーパールーパーの仲間であり、これまで知られている最大級の洞穴性の脊椎動物です。

一生を洞窟の中で過ごすホライモリは独自の進化を遂げており、他の両生類ではありえない特徴がいくつもあります。

100年もの寿命を持ち、生殖周期は12.5年に1度きり。さらに低酸素にも耐性があり、代謝効率もよく数年間食べずに生きてゆけるなど、極端な能力が知られています。

加えて今回、ホライモリの生活空間を調べる長期的な研究が行われたところ、ほとんどのホライモリは数年間、同じ場所から数メートルも動いていないとのこと。中には7年間もの間、移動が確認されない個体もいたようです。

研究内容はハンガリーの研究者G. Balazsらによって、1月28日に学術雑誌「Journal of Zoology」に掲載されました。

Extreme site fidelity of the olm (Proteus anguinus) revealed by a long-term capture–mark–recapture study
https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jzo.12760

暗く栄養に乏しい洞窟環境に適応

洞穴の環境は、光がなく、温度が一定で、栄養に乏しいという特徴があります。

ホライモリはこの環境で進化したために、目が皮膚の中に埋もれてしまい、外観上、目が退化してなくなったように見えるのです。

一方で、暗闇に適応するために、水中聴覚や嗅覚、磁気感覚といった非視覚感覚を発達させています。

また乏しい栄養環境の中でエネルギーを節約するために、ホライモリはギリギリまで代謝を遅くしました。

そのため、多くのエネルギー消費が必要な成長や生殖周期に時間がかかるようになってしまいましたが、代謝が遅いことでDNAにかかる負担が少なくなり、結果的に100歳を超える長寿も可能となりました。

100歳を超える寿命の長さは、両生類の中では群を抜いています。

そんなホライモリに対して、生物学者は古くから関心をもっており、1807年には既に寿命の長さに関する報告があがっています。

しかし、ホライモリの変わった特徴に目がいく一方で、これまで、基本となる生態学的なデータ(空間戦略、運動パターン、集団の分散範囲など)は知られていませんでした。

これまで得られたホライモリにかかわるデータは、全て人間の飼育下におけるものだったからです。

そこで今回、研究者は野生のホライモリに個体識別可能なタグをホライモリにつけて、野生環境における各個体の長期的な移動範囲を調べました。

何年たっても、タグつきの個体は同じ場所にいた

縦軸が移動距離(m)。横軸が経過日数(日)。ほとんどの点が縦軸の10mより下の部分に集中していることから、ホライモリは日数が経過しても動いていないことを意味する/Credit:Journal of Zoology

タグつきの個体を回収した結果、意外な事実がわかりました。

ほとんどのタグ付き個体のほとんどは、以前に捕獲された場所と数メートルも違わない場所で発見されたのです。

さらに時間を経過させ、繰り返し確かめましたが、多くのホライモリたちは前回と同じ場所にいました。

なかには、8年間の繰り返しの調査にもかかわらず、常に同じ場所に留まり続けた個体もいました。

また長年の複数回に及ぶ調査でも、タグ付けされたホライモリが洞窟の規定の範囲から外へ出る事例は観察されず、ホライモリたちは洞窟の外に出て、他の洞窟へいくといった分散行為もみられませんでした。

ホライモリは動かなくても生きて行ける

動こうと思えば動けるホライモリ/Credit: wikipedia / Arne Hodalič

これまでの研究で、ホライモリはその気さえあれば、数十メートルの距離を一気に泳いで移動できることが知られています。

しかし、実際にはめったに動くことはありません。

その原因のひとつは、洞窟内にホライモリを食べる捕食者がいないことです。逃げる必要がないために、運動能力もいらないのです。

またエサは水生昆虫や小型の甲殻類などですが、洞窟環境ではお互いに目が退化しているために、派手な狩りは行われず、エサが自分からそばにやってくるまで、ホライモリはひたすら待ち伏せ、機会が来れば一気に飲み込みます。

そのため、摂食動作はほとんど距離移動を伴わないものになります。

楽な暮らしのように思われますが、待ち伏せに徹するということは、エサが来なければ永遠に食べられないことを意味します。

そのため、エサがない間は代謝を限界まで落としエネルギー消費を抑えることで、数年間もエサを食べずに生きていけるように進化したのです。

結果ホライモリは、野生環境においてナマケモノを遥かに上回る「不動性」を手に入れたのです。

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reference: independent / written by ナゾロジー編集部
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