フクロウの滑空飛行には空気抵抗を減少させる秘密が隠されていた

science_technology 2020/02/29
Credit:Experimental Biology
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  • フクロウ滑空飛行における気流が可視化された
  • フクロウの飛行技術は、小型飛行機の飛行効率を向上させるのに役立つ

科学者たちは、鳥たちの飛行技術から学び、高効率の飛行機を多く開発してきました。

最近の研究でも、フクロウの滑空技術から新たな秘密が見つかったばかりです。

Royal Veterinary College(RVC)の科学者チームは、フクロウの飛行を撮影して、これまでに知られていなかった尾羽根による気流の可視化・分析に成功したのです。

これにより、小型飛行機を効率的に飛ばせるようになります。

研究の詳細は「 Experimental Biology」誌に掲載されています。

High aerodynamic lift from the tail reduces drag in gliding raptors
https://jeb.biologists.org/content/223/3/jeb214809

航空機は鳥よりも粘性抵抗に鈍感?

Credit: Gap1/wikipedia

航空機が空を飛ぶためには、機体を浮かせる力(揚力)が必要になります。しかし、一般的に揚力を生じさせるなら、機体の進行を妨げる力(抗力)も加わります。

ですから、効率的に飛行させるためには、揚力と抗力などの抵抗のバランスを考えなければいけません

機体が受ける抵抗の中には、「粘性抵抗」と呼ばれる空気の粘性によって生じる抵抗があります。

流体すべてには粘性があります。ハチミツのようにドロドロとしたものだけではなく、水や空気にも粘度があり、粘性抵抗が生じるのです。

鳥などの比較的小さく遅い飛行体は、粘性の影響を非常に強く受けます。対して、飛行機などの巨大で高速な航空機は、小型飛行体ほどの影響を受けません。

ですから、従来の航空機に採用されている航空力学では、鳥たちほど敏感に、粘性抵抗に対応しなくて済むのです。

そして現状、一番効率の良い方法は、航空機の「両翼に大きな揚力を与え、尾翼には余分な揚力を発生させない」ようにすることです。

仮に尾翼に揚力を発生させてしまうと、抵抗が大きくなり効率が悪くなるでしょう。

航空機の両翼からは2つの渦が発生している/Credit:onerigo

揚力が生成される過程では、ダウンウォッシュと呼ばれる渦が作られるので、航空機からは、両翼による2つの渦のみ発生します。

フクロウの飛行は空気の粘性抵抗を減少させる

では、空気の粘性の影響を受けやすい小型飛行体にとって、ベストな飛行法はどんなものでしょうか?

この点が、フクロウの滑空飛行の撮影によって解明されました。

フクロウからは4つの渦が発生している。両翼から2つ、尾羽根の左右の先端から2つ。赤い印は、尾羽根から発生した渦/Credit:Experimental Biology

前述したように、飛行機などの大型航空機において効率的とされていたのは、両翼のみに揚力が生成されている状態です。「2つの渦」しか発生しません。

しかしヘリウムガスの霧を充満させた中をフクロウに滑空させたところ、4つの渦が発生していました。両翼に加えて、尾羽根からも2つの渦が作られています。

つまり、両翼だけでなく、航空機ではタブーとされていた「尾羽根からも揚力を発生」させていたのです。

研究の結果、科学者たちは、フクロウが尾羽根の揚力を利用して粘性抵抗を減少させていることを発見しました。

フクロウは両翼だけでなく尾羽根にも揚力を発生させることで、フクロウの身体全体に揚力が均等に加わるよう調整していました。

そして、この時のフクロウが受ける粘性抵抗は、最小限に抑えられていたのです。

揚力によって発生する渦が可視化されている。4か所で揚力を発生させることにより、身体全体に揚力が加わるようにしている/Credit:Experimental Biology

もちろん、尾羽根に揚力を発生させることで、粘性以外の抵抗は大きくなり、飛行も不安定になります。

しかし、粘性抵抗による影響があまりにも大きいので、フクロウは、他を犠牲にしてでも、この粘性抵抗の減少を優先しています。

この選択により、フクロウは総合的な抵抗値を減少させ、一番効率良く飛行することができていたのです。

巨大な航空機の発達は、科学者たちから小サイズの航空力学を遠ざけてきました。

しかし、近年ではドローンや小型飛行機の需要が高まっています。この点で、フクロウによる空気力学の発見は大きな役目を果たすでしょう。

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reference: rvc,dailymail / written by ナゾロジー編集部
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