禁忌の人体実験が可能に?人工臓器を組み合わせた「疑似人体」を開発

biology 2020/03/11
複数のオルガノイドを基盤の上に配置した様子。左下の呼吸する肺から出た酸素の多い体液は赤で示され、各臓器から戻って来る酸素の少ない体液は青で示されている/Credit:youtube.TissUse
point
  • 脳を含む複数の培養臓器を連結した疑似人体の作成に成功した
  • 疑似人体は創薬において有用
  • 完璧な培養脳を作ることは倫理的に問題になる可能性がある

近年の急速なバイオテクノロジーの発展によって、様々な臓器が試験管内で培養可能になりました。

これらの培養された臓器は「オルガノイド」と呼ばれており、人体実験の代用品として使われています。

これまでは単体での利用が主でしたが、今回アメリカの研究者によって、脳を含む複数のオルガノイドを血流によって組み合わせ、基盤の上に配置することで「疑似人体」の作成に成功しました。

この統合的な疑似人体は、肺によって酸素を取り込み、心臓を脈拍させ、すい臓でインスリンを分泌し、精巣や卵巣まで供え、脳では神経活動が観測されています。

研究者たちは、このシステムを禁じられた人体実験の代用として利用することで、主に創薬において多くの利益があると述べています。

しかしこの技術が行きつく先は、ゼロからの人体構築です。

ほぼ完ぺきな疑似人体が作られたとしたら、人間との境界は何が決めるのでしょうか?

研究はアメリカ国防総省下にある国防脅威削減局による資金援助を受け、オハイオ州立大学生物医学工学部のSkardal氏らによってまとめられ、2月26日に学術雑誌「Biofabrication」 に掲載されました。

Drug compound screening in single and integrated multi-organoid body-on-a-chip systems
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1758-5090/ab6d36

疑似人体の構成

各種臓器のオルガノイドが配置されているイメージ図/Credit:youtube.TissUse

これまでにもオルガノイドを用いて薬(新薬や毒)の反応を確かめる実験は行われていましたが、本来臓器は各部署が連携して働くために、単一のオルガノイドの研究では得られる知識に限界がありました

今回の研究に用いられた複数のオルガノイドは、図のように人工的な血管で結び付けられており、臓器の維持に必要な酸素はシステム内の肺組織によって供給が可能です。

また追加の実験では心臓や血管も組み込まれ、薬や毒に対する、より有機的な実験結果を得ることが可能となりました。

各種のオルガノイドの寿命は最低でも28日以上とされており、長期的な実験も可能です。

今回の研究では、研究者たちはオルガノイドを薄くスライスしてチップの上に張り付けることで、人体の百万分の一レベルのコンパクトな疑似人体を作ることにも成功しました。

各種オルガネラをチップ化することで取り扱いが容易になり、様々な実験を容易に行うことができると考えられます。

脳のオルガノイドだけが抱える問題

5週齢の胎児に似た消しゴムサイズの脳オルガノイド。上の飛び出ている部分が発達中の大脳半球/Credit:オハイオ州立大学

近年、複数の研究によって複雑な構造を持つ人間の脳のオルガノイドが作られています。

これら高度な脳オルガノイドの中には大脳、中脳、小脳を供えたものも含まれており、中には活発な神経活動の結果、成長中の赤ちゃんに似た脳波が検出されているものもあります。

そのため一部の人々は、脳オルガノイドに意識が宿っている可能性に言及しています。

また、脳オルガノイドの発達はなぜか約10カ月で成長を停止することが知られていますが、その理由についてはわかっていません。

今後、技術の進展によって肺や胃といった各臓器のオルガノイドは限りなく本物の人間の内臓に近いものが作られると期待されます。

しかし、脳オルガノイドだけは「本物」に近づくことに倫理的な問題が伴うと研究者たちは考えています。

限りなく本物に近い培養脳には、本物の意識が芽生える可能性があるからです。

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reference: sciencealert / written by katsu

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