骨髄移植でHIVを奇跡的に克服
今回、HIVの克服に成功したのは、イギリス在住のアダム・カスティーリョさん(40)。
アダムさんは、2008年にHIV感染が認められ、2012年から追跡治療を開始。その翌年には、血液がんの一種である「ホジキンリンパ腫」と診断されました。
その後、2016年にドナーから受けた骨髄の移植手術を受けています。骨髄を提供したドナーは、きわめて稀なことに、HIVの定着を妨げる遺伝子を持っていました。
この遺伝子変異は、ヨーロッパ総人口の1%以下にしか現れないそうです。
手術は見事に成功。術後の追跡診断でも、30ヶ月にわたり再発が認められないことから「完治した」と判断されています。
主治医でもあるグプタ氏によると「アダムさんの体内にHIVの断片が、いわゆる化石化した状態で見つかりました。もはや増殖できる状態ではなく、再発の危険性もないでしょう」と話しました。
その一方で、「今回のような幹細胞(骨髄内に存在)の移植はHIVの一般的な手段ではなく、危険も伴う」と述べています。
幹細胞移植の死亡率は10%を超えており、毎年100万人近くが亡くなっています。
カスティーリョさんの場合は、この方法以外では命を落とす瀬戸際までさしかかっており、最後の手段として選択されたそうです。
グプタ氏は「幹細胞移植という手段は、患者が何もしなければ死亡する状態にあるかどうか、冷静に判断しなければならない」と話します。
HIV克服の道が完全に拓けたと言うには、まだ早そうです。