「科学者だけどロッキー山脈の頂上でメントスコーラやってみた」驚異の科学論文

fun 2020/04/13
異なる標高におけるメントスコーラ実験。/Credit:Kuntzleman & Johnson, Journal of Chemical Education, 2020
point
  • メントスコーラのファンを自称する研究者が、標高4300mの山頂を含む様々な高度で実験を試みた
  • 彼は気圧差の影響データと、発泡で失われる質量の関係から、メントスがなぜこの現象で最適かを特定した
  • メントスは、炭酸ガス発泡の核となる表面気泡のサイズと密度が、もっとも理想的な配置をしている

コーラにメントスを入れてみた、という動画は誰もが一度は目にしたことがあるでしょう。

あまりに安く、簡単で、しかも安全に劇的な化学反応を実演できるメントスコーラは世界中の動画製作者や、実験実演者たちに人気の題材となっています。

この基本的な原理は、割と簡単に説明することが可能ですが、微視的なレベルでの現象については、まだ詳細が明らかになっていません。

え? メントスコーラは科学的に未解明なの!? と思うかもしれませんが、こういうのはそこまで本気で研究する人がいないというのが最大の理由です。

しかし、メントスコーラを題材に論文を書く研究者が少なからず世の中には存在しています。

今回の研究者もメントスコーラ研究を更新するために、空気圧の異なる様々な標高でメントスコーラ実験を繰り返し、最後はなんとロッキー山脈を登って標高4300メートルの高地で実験したというのです。

なにがそこまで…と思ってしまいますが、この成果は論文にまとめられ、メントスがこの実験で最適な理由を明らかにしています。

この研究は、メントスコーラのファンを自称する米国スプリング・アーバー大学の研究者Thomas Kuntzleman氏によって発表され、論文はアメリカ化学会の査読付き学術雑誌『Journal of Chemical Education』に227日付けで掲載されています。

Probing the Mechanism of Bubble Nucleation in and the Effect of Atmospheric Pressure on the Candy–Cola Soda Geyser
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jchemed.9b01177

メントスコーラ実験

ダイエットコーラを使ったメントスガイザー。/Credit:Wikipeia Commons,Michael Murphy

メントスガイザー(ガイザーは間欠泉の意)という名前でも知られているこの実験は、コーラのボトルにラムネキャンディーを放り込むと、間欠泉のように泡が溢れ出すというものです。

利用するコーラはダイエットコーラがもっとも勢いよく吹き出すと言われていて、放り込むキャンディはメントスが最適です。

この現象が発生する理由は単純です。

炭酸飲料は高圧下で溶液中に炭酸ガスが溶け込ませてあります。このガスは空気に触れることで、大気中へと逃げ出していきます

空気に触れる溶液表面が大きくなればなるほど、逃げ出す炭酸ガスの量も多くなります。炭酸飲料を振ると一気に中身が溢れ出してしまうのも、この作用が原因です。

メントスは多孔質のキャンディで、その表面には細かなたくさんの気泡が存在しています。

コーラにメントスを放り込むと、この小さな気泡を核にして炭酸ガスが気化していくため、炭酸ボトルをシェイクしたのと同じような状態が生み出され、飲料が溢れ出るのです。

ソフトキャンディー表面模式図。/Credit:新潟大学教育学部研究紀要 自然科学編, 中村・信田(2016)

この気泡のサイズは、理論上1マイクロメートル(100万分の1メートル)以上である必要があると言われています。

しかし、一個の表面気泡が大きくなれば、その分、表面に作られる気泡の数は減ることになります。

二酸化炭素が溶液から効率よく抜け出すためには、それぞれの気泡に十分な炭酸ガスが流れ込む最適な条件が必要になるのです。

他にもメントスは、溶解した炭酸ガスを抑える水の表面張力を崩す界面活性剤が含まれているなどの要因もありますが、今回の研究では物理的な影響をメインに調べられています。

今回の研究者は、メントスコーラを起こすのに最適な、表面気泡のサイズと密度を明らかにしようとしました。

ですが、この電子顕微鏡レベルの微細な世界を、実験を行った瞬間に見るというのは簡単ではありません。

そのため、ここでの反応を推測できる物理的なデータを集めようと、彼は考えたのです。

標高差(空気圧差)を使った実験

異なる標高におけるメントスコーラ実験。左が海抜。右は標高3000m。/Credit:Kuntzleman & Johnson, Journal of Chemical Education, 2020

今回の研究者Kuntzleman氏は、標高が高い場所でこの実験をすれば、反応がはるかに劇的になることに気づきました。

そして、様々な標高で実験を繰り返し、影響を記録していったのです。

彼は、父の日の家族旅行中に訪れた先で、父親の許可を得ながらメントスコーラ実験を繰り返したそうです。

旅行先の様々な標高でメントスコーラ実験をするKuntzleman氏。/Credit:Coke and Mentos at 14000 Feet,Tommy Technetium

なんとも楽しそうですね。

この旅行で彼は、デスバレー海岸の海抜から、ロッキー山脈のパイクスピーク山頂4,300メートルという高地までメントスコーラの実験を行いました

ふざけているようにも見えますが、これは真面目な研究です。Kuntzleman氏は、この実験から空気圧だけでは観測結果が説明できないことを発見し、発泡作用に寄与する変数を導き出したのです。

彼が気圧の変化と、発泡によって失われた質量の関係から得た方程式を計算すると、発泡に最適なキャンディ表面の核生成気泡のサイズが2~7マイクロメートルであることがわかりました。

これは顕微鏡で確認されている、メントス表面の気泡サイズと密度に近いもので、なぜメントスがこの実験に最適であるかを物理的にも説明しているといいます。

遊びで作った動画のようでありながら、きちんとジャーナル掲載される論文になるとは、なんでも楽しんでやった者勝ちという感じですね。

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reference: sciencealert / written by KAIN
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