双子が生まれるのは人間の生存戦略なの?

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Credit:リトルツインスターズ「Twinkleforever」【キキ&ララ40周年】,サンリオ
point
  • 一卵性双生児と異なり二卵性双生児は、女性の年齢など発生には遺伝性の要因がみられる
  • 新たな研究は、双子と単身の出産後の母子生存率などから、数学モデルを作成
  • シミュレーションの結果、双子は出生率を高める生存戦略上の副産物と判明した

学校では必ず何組かは双子の兄弟がいるものですが、双子はどうして生まれてくるのでしょうか?

一口に双子といっても、それはまったく同じ姿をした一卵性双生児と、遺伝的には異なる二卵性双生児が存在します。

一卵性双生児については、受精卵が2つに分裂するために誕生しますが、これは発生率などの分析から、まったくの偶発的な事故の結果であるとわかっています。

一方、二卵性双生児は別々の受精卵から誕生します。これは女性が卵子を2つ同時に放出して、両方とも受精した結果です。

卵子の二重放出は高齢の女性ほど起こり易いことがわかっています。二卵性双生児の誕生は、明らかに遺伝子に組み込まれた何らかのプログラムが関係しているのです。

しかし、その背後にある進化戦略についてはほとんどわかっていません。

新たな研究は、数学モデルによる双子出産のシミュレーションから、この謎を明らかにしようとしています。

果たして二卵性双生児が生まれるのは、生物の生存政略上の深い理由があるからなのでしょうか? それとも遺伝子の偶然による現象なのでしょうか?

双子はなぜ生まれるのか?

一卵性双生児(左)と二卵性双生児(右)。/Credit:depositphotos

これまでの研究で、双子を含めた多産は母子にとって健康リスクが非常に高いということが示されています。

人間は通常単一出産を行うようにできていて、双子を生むことは母親の出産後の生存率にも影響しています。

また、新生児も出生時の体重が少なくなるなど、未熟児の状態で生まれるリスクが高くなります。

現代で双子の出産が安全に行われ、健康に成長できるのは、医療環境が非常に良好であるためです。

そのため生物学上は、人類種にとって双子の誕生はあまり歓迎できるものではないのです。

しかし、双子が生まれるメリットに目を向けてみると、多産の集団は明らかに単一の出産を行う集団より多くの子孫を残すことが可能になります。

これは進化の戦略上では、たしかに有利に働く要因です。

けれど、そちらを主軸に考えた場合、ではなぜ双子の誕生は珍しいのか? という疑問が生まれます。戦略上有利に働くならば、双子はもっと積極的に生まれてもいいはずなのです。

卵子と出生率の数学シミュレーション

この問題を解決するために、今回の研究チームは、妊娠した女性の双子と単一の出産、それぞれにおける出生後の母子生存率のデータを使用して、数学モデルを作成しました。

このモデルの作成によって、研究者たちはこれまで不可能だった検証ができるようになりました。

それは、女性の年齢と二重排卵の関係から期待される生涯の繁殖成功率のシミュレーションです。

現在わかっている事実から、女性は高齢化するほど二重排卵を行う可能性が高くなります。そこで、研究者たちは、20代半ばから二重排卵に切り替えた場合と、常に1つの排卵しかしない場合、常に二重排卵を行う場合の3つのパターンで、生涯の子供の数がどう変わるかを比較しました。

排卵数の変化と子供数の比較。/Credit:conversation

すると、二十代半ばに単一の排卵から二重の排卵に切り替えた女性がもっとも多く子供が生存するという結果になりました。

常に単一排卵しかしなかった場合は当然子供の数は少なく、常に二重排卵を行った場合も健康リスクの問題から子供の生存率は低い結果になりました。

つまり、女性が高齢になるほど出産や受精の成功率は下がる傾向にあります。

卵子が2つあれば、少なくとも1つは出産に繋がる可能性が高くなります。年齢の上昇に従って女性の二重排卵が増えるのは、こうした生存戦略と言えるのです。

では双子が生まれるという問題についてはどうでしょうか?

双子の数学シミュレーション

次のシミュレーションで研究者たちは、先程と同様の条件で、常に双子が生まれた場合と、常に一人の子が生まれた場合の比較を行いました。

常に双子が生まれる場合と単一で生まれる場合の比較。/Credit:conversation

すると、常に単一出産した場合は、常に二重排卵している女性がもっとも子供を増やすという結果になりました。

つまり、もっとも理想的なのは、常に二重排卵して単一の子供が生まれる状態だったのです。

このことから、二卵性双生児が生まれてしまうのは、年齢上昇に伴って出生確率を上げるために二重排卵へ切り替えたことによる作用だったことが明らかになったのです。

本来なら、二卵性双生児ができてしまうのは、生物学的には好ましい状況ではなかったようです。

このように機械的な処理で言われると、実際妊娠した女性や、二卵性双生児の兄弟は微妙な気分になってしまうかもしれません。

しかし、これはあくまで、健康面での医療サポートができない自然な状態における生物の戦略を示したものです。

研究者たちも決して生命の誕生を軽んじたり、機械のように扱っているわけではありません。

生物の戦略上の意図はこのような結果となりましたが、子供はみな望まれて誕生する命です。親にとっては関係のない研究だったかもしれません。

Credit:depositphotos

この研究は、米国デポウ大学の生物学者Wade N. Hazel氏を筆頭とする研究チームより発表され、生態学と進化研究に関する査読付き学術雑誌『Nature Ecology & Evolution』に5月11日付で掲載されています。

An age-dependent ovulatory strategy explains the evolution of dizygotic twinning in humans
https://www.nature.com/articles/s41559-020-1173-y

男女でも一卵性!?非常に珍しい「準一卵性」の双子が世界で初めて妊娠中に発覚

reference: theconversation,DePauw University/ written by KAIN
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