ビッグバンから10億年の初期宇宙に予想外の「巨大回転銀河」を発見

space 2020/05/21
初期の塵の多い宇宙にある巨大な回転円盤銀河、ウォルフディスクのイメージ。/Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello
point
  • 一般的な銀河形成モデルは、銀河がぶつかり融合して巨大化したと考えている
  • しかしアルマ望遠鏡は、ビッグバンから10億年程度という初期宇宙に、巨大な回転銀河を発見した
  • 巨大銀河は冷たいガスが降着して形成され、初期宇宙には数多く存在していたと考えられる

天の川銀河のような巨大な銀河は、多くの銀河がぶつかり合って融合し形成されたと考えられています。

この場合、巨大で安定した回転を行う円盤銀河ができるまでは非常に長い時間がかかります。

そのため定説に従えば、初期の宇宙に巨大な安定して回転する銀河はなかったという予測になります。

ところが、大型電波望遠鏡ALMAは、宇宙が現在の10%の年齢でしかなかった頃に巨大な回転円盤銀河が存在していたことを発見したのです。

これは従来の銀河形成モデルに挑戦を投げかける、新たな可能性を示しています。

遠い宇宙の冷たい回転銀河

今回発見されたのは「DLA0817g」という名の銀河で、天文学者アーサー・M・ウォルフの名にちなんでウォルフディスクと呼ばれています。

これは125億光年先という、現在観測されている中でも、もっとも地球から遠い回転円盤銀河です。

ALMAの観測によると、この銀河は私たちの天の川銀河と同様に毎秒272キロメートルの速度で回転しています。

現在の宇宙進化論では、ウォルフディスクのような大質量銀河は、小さな銀河と熱いガスの塊が、何度もぶつかり合い融合し、徐々に成長してできたと考えられています。

そのため、宇宙初期に発見された銀河の多くは一貫して激しい合体を繰り返しており、天文学者Neeleman氏の言葉を借りれば「まるで大破した列車のよう」な状態なのです。

銀河衝突シミュレーション。/Credit:国立博物館,成見哲(東京大学)他

このような熱い銀河形成モデルでは、秩序ある冷たい回転円盤を形成するには60億年以上の時間が必要だったと考えられています。

しかし、ウォルフディスクは現在の宇宙年齢の10%程度しかなかった頃に、すでに形成されていました

これは別の銀河形成モデルを考慮する必要がでてきます。

ウォルフディスクはどうやってできたのか?

これには冷たい銀河形成モデルを考える必要があります。

ここでいう熱い・冷たいというのは、物質の運動エネルギーを指します。

生まれたばかりの宇宙は、水素によって均一に満たされた状態だったと考えられますが、これは暗黒物質によって引き寄せられ、宇宙の中にムラを生み出していきました。

暗黒物質がなぜあるのかはまだわかっていませんが、冷たく動き回らない物質だった場合、銀河にフィラメント状のネットワークを形成した可能性があります。

ダークマターで作られた宇宙の大規模構造のシミュレーション。/Credit:矢作日出樹、長島雅裕/武田隆顕/国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

このとき、もし星の材料となるガスがもともと冷たければ、ネットワークに沿って吸い寄せられていき、それが大きく冷たい、秩序だった回転をする円盤銀河を形成したのかもしれません

こうした冷たい銀河形成モデルは以前からありましたが、検証するには証拠となる天体を観測によって発見しなければなりませんでした。

今回のウォルフディスクの発見は、こうしたモデルを補強するためのものなのです。

遠い宇宙で「普通」の銀河を探す

地球に比較的近い宇宙では、冷たく秩序だった回転をする大きな銀河は簡単に見つかります。

しかし、こうした銀河はそこまで激しい活動をしているわけではないので、宇宙の中では暗い部類の天体です。

125億光年というような、初期宇宙の領域からこのような大人しい普通の銀河を見つけ出すことは非常に困難です

そのため、これまでは冷たい銀河形成モデルを支えるような発見が報告されてきませんでした。

では、遠い宇宙にある「普通」の銀河ウォルフディスクはどうやって発見されたのでしょうか?

研究者たちが見たのは、より遠い宇宙で輝く宇宙一明るい天体―普通じゃない銀河「クエーサー」の光でした。

クエーサーのアーティストイメージ。/Credit: NASA/ESA/ESO/Wolfram Freudling et al. (STECF)

クエーサーの光の中には、巨大な銀河を取り囲む水素ガスを通過した際、吸収された痕跡がありました。

天文学者は、はるか遠くの宇宙にある暗い天体の僅かな光を探すのではなく、強力なクエーサーの「吸収」された光を使って、初期宇宙から「普通」の銀河を見つけたのです。

ALMAが撮影したウォルフディスクの電波画像。/Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Neeleman; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello

こうしてウォルフディスクは、2017年にALMAによって初めて発見されました。

こうした普通の銀河が遠い宇宙から見つかるということは、初期宇宙に巨大な回転円盤銀河はもっとたくさんあったということです。

高性能な電波望遠鏡ALMAの高度な感度と、天文学者の試行錯誤が、予想外の観測を可能にしている、と研究者は感想を述べています。

この研究は、マックスプランク天文学研究所の研究者Marcel Neeleman氏を筆頭とした研究チームより発表され、論文は権威ある科学雑誌『Nature』に5月20日付で掲載されています。

A cold, massive, rotating disk galaxy 1.5 billion years after the Big Bang
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2276-y

Wolfe Disk NRAO Press Release from NRAO Outreach on Vimeo.

宇宙最初の銀河か? 観測史上最古の「銀河団」が発見される

reference: NRAO,sciencealert/ written by KAIN
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